エスケイプ・フロム・トゥモロー

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ディズニーの打ち出すユートピアがひっくり返る瞬間。
意外や意外、しっかりできたナイスホラーな「トラッシュムービー」!

75点

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日本でも「夢の国」と呼ばれ絶大な人気を誇る、某有名テーマパークを舞台に描いたダークファンタジー。米カリフォルニアにある同パーク内で無許可でゲリラ撮影した映像を使い、作られた。何をやってもダメな中年アメリカ人のジムは、口うるさい妻と言うことを聞かない子どもたちを連れ、魔法の城や妖精やプリンセスたちの待つ、ある有名なテーマパークに遊びにくる。夢と魔法の国で現実逃避をしようと思ったジムだったが、そこに現れた黒いプリンセスによって幻想の世界に入り込んでしまい、楽しいはずの家族旅行は、妄想と奇妙な出来事にあふれたシュールな悪夢へと変貌していく。
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トラッシュムービーなんて書きましたが、クソみたいな作品というわけではなくて、ストリート的な感性で仕上げられた荒削りながらも鋭い魅力を持った映画という意味なのであしからず。
さてさて、情報は薄い(マスに向けてる分しょうがないところがあるんでしょうけど!その葛藤はわかりますよ!)ものの頑張っている映画サイトホラー通信さんで公開を知った『ESCAPE FROM TOMORROW』
雷雨轟く中、おしゃれなアベックでいっぱいのTOHOシネマズ日劇に観に行ってきました。
“シアターN”感あふれる作品でも、ディズニーが(少しでも)関連していると、客層がこんなにも違ってくるのか、恐るべきウォルトディズニー…と驚いた次第です。

いやはや評判はどんなもんだろうなー、と軽くググッてみると、どうやら「サンデー・ジャポン」や「王様のブランチ」でも取り上げられていたようですね。
たしかに、かなりキャッチーな作品であることは間違いないと思うのですが、「ディズニーに無断で撮影とか、かなりラディカルな人たちが作った映画が観れるんでしょー!やべー!訴えられるんじゃないの!」という類の話題ばかりが取りだたされるのは、いかがなものかなーと思っています。

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ディズニーに無断で撮影したことはたしかに面白いトピックだなあとは思うけど、
ディズニーのいじられっぷり(というかネタにしやすいところ)は、これまでにもかなりイイ具合の作品がRodolfo Loaizaだとか、Adam Ellisだとか、Simone Robelliniだとかによって作られてきたわけで…

ディズニーで撮っているという飛び道具はあれど「映画」ということで、ざっくりと物語の流れを紹介しておくと…
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ディズニーランドのホテルに宿泊している家族。開演前に父のジムは電話でクビを告げられてしまう。

ジムは妻エミリーにクビになったことを伝えることが出来ないものの、家族で過ごすディズニーランドを楽しもうとする。

パーク内を結ぶ電車の中で2人のフランス人女性に遭遇。ジムは現実を逃避するかのように、その2人組を見つめる。

ディズニーランドに到着(広角でシンデレラ城を映す瞬間は誰もがアガること間違いなし)

さまざまなアトラクションを息子と娘サラとともに楽しむ。その間にジムは非日常を楽しもうとエミリーにキスをせがむも、冷たくあしらわれる。

そんななか、ジムはアトラクションに登場する人形の顔が恐ろしい顔に見えてしまうなどの幻覚に襲われてしまう。

息子と娘の乗りたいアトラクションが違ったため、ジム+息子、エミリー+サラの2組に分かれて行動することに。

エミリー+サラがさまざまなアトラクションを楽しんでいる中、ジム+息子はバズライトイヤーのアトラクションの長蛇の列に並んでいた。ようやく乗れるかと思ったその頃「このアトラクションは中止します」とのアナウンスが。

ジムは、フランス人女性2人組の後を追ってアトラクションを楽しむことにした。
そんな中、お母さん(エミリー)の話に。「エミリー・ディキンソンやティナ・フェイのような美人だ」というのはジム。

引き続き、フランス人女性2人組の後を追ってアトラクションを楽しむジム+息子。
息子は酔いやすい体質であるにも関わらず、父がスペースマウンテンに乗せてしまう。
案の定息子は体調を悪くしてしまい、吐いてしまう。

4人は合流。息子の服、胸元の汚れを見て、その汚れについて問いただすエミリー。
ジムの軽率な連れ回しから喧嘩になってしまい、エミリーは息子とともにホテルで休憩することに。
その間、娘のサラは父と行動をともにすることに。

サラ、洞窟で電動車いすに乗った気持ち悪い男の息子にぶつかって、膝を擦りむいてしまう。

医務室に向かう2人。
傷の手当を終えるとジムと二言三言会話を。親子が部屋を出て行くと、「まだ感染に気づいていない…」「外では気をつけて…」と意味深な言葉を吐きながら、看護師はその場でうずくまり、急に泣き始めてしまう。

すっかり元気になったサラ。広場らしき場所でそこにいた男の子と仲良く遊んでいる。
その男の子の母と思われる女の隣で“エミューの肉”を貪っているジム。
女と二言三言交わしていると、その女の身につけているペンダントの輝きにくらっとしてしまう。

ジムは気づくと、その女とセックスをしていいた。
行為を終えて、自室に戻るとエミリーと息子はそこにおらず、プールで遊んでいた。

今日は楽しもうとしていたジムは、プールのなか、エミリーに向けて購入していたベルをプレゼント。しかし、キャラクターが違うとふてくされてしまう。
また、サラに日焼け止めを塗っていなかったことについても釘を刺されるジム。

花火にそなえて服を着替えようと部屋にもどる親子。
ベランダでビールを飲んでいるジムは下に居る誰かと目が合い、ビール瓶を落としてしまう。
そのビール瓶を片付けている最中に小指を負傷してしまう。

ご飯を食べながら酒を煽るジム。飲み過ぎだから…と諌められるも「ここは夢の国だぞ!」と、その発言を無視して飲み続ける。

またしてもアトラクションの中で幻覚を見てしまうジム。
エミリーも幻覚を見る。

トイレで汚れた靴下を洗い、乾かしていると、サラを怪我させた少年の父が登場。
ジムのシャツが破れてしまう。

家族の間で歪が起こり、またしてもエミリー+息子、ジム+サラの別行動がスタート。

クビを伝えられる電話で「必ず行けよ」と言われていたソアリンというアトラクションに。
スクリーンに女性が映って、こちらに語りかけてくるという幻覚を見るジム。

ジムの妄想の中で、
フランス人女性2人組の1人が娘にキス→手をつなぐ、そして3人で球形のアトラクションに向かうと、その球体が爆発する。

現実に戻ってくるジム。
すると、フランス人女性2人組の1人がジムを誘惑してくる。

ジムが断ると、女は口からつばのような、霧のようなものを吐き出し、ジムの顔に吐きかける。
「やっぱりね、これでわかったわ。任務完了。」というセリフをあとにその場を離れていく。

即座に妙な男たちがジムを取り囲む。股間に電気銃のようなものを撃ち込まれ、捉えられる。
↓【黒身をはさむ】
実験室のような場所にいるジム。
SIEMESと書かれた機械に取り囲まれながら「あのフランス人に乗っ取られなければ、息子と来るはずだったのに」などと言われ、脳内を覗かれてしまう。

ここを逃げ出さなければと思ったジムは傷薬を辺り構わずぶっかけまくり、それによって脱出完了。

見失ってしまっていたサラを花火の中探しまわり、セックスをしたペンダント女の部屋にたどり着く。
そこには、魔女の格好をした女が。

もともとプリンセスをやっていたというその女の「いつも笑顔でなんていられない」といった辛苦話を聞かされ、なんとか部屋を脱出。自室にたどり着くとエミリーと息子はすやすやと寝ていた。

ジムは腹の調子が悪くなり、トイレの中でうんこ。
下劣な音を轟かせた後、は口から毛玉を吐く。自身がネコインフルエンザにかかったことを悟る。
口からは流血し、立つこともできなくなったジム。

すると、息子エリオットが扉をあけてこちらを見る。少し間をおき、そのまま扉は閉められてしまう。

翌朝、エミリーは部屋の散乱っぷりにビビりながら、トイレへ。
夫の笑顔の死体を確認。

するとディズニー専属レスキュー隊のような男たちが死体回収に。

そのうちの1人がエリオットを強く見つめる。
そして、エリオットの頭に手を置き、バズライトイヤーのアトラクションの記憶を埋め込んだうえで、バッジを胸につける。
エミリーはジムからもらったベルをなぜか鳴らしている。

そして、ディズニー開演前。
ジムの死体を乗せた車が出発するやいなや、ある1代の車が到着。
車から降りてくるのは、ジム、幻覚で見た女、息子、娘の4人。

ティンカーベルのような姿をした女性2人組があらわれ終了
—–
といった感じです。
今回は、いつもに比べて丁寧に物語を追ったつもりですが、読み返してみるとわかりづらいですね…
もちろん僕の文章、記憶能力の問題もあるのですが、それ以上に物語としてわけのわからない流れが多すぎるからというのも理由のひとつなんですよ!そのあたりについては、あとで触れていくこととして…

よかったところ
○ディズニーランド内での撮影という制約の中で実現したクールなビジュアル
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ディズニーでゲリラ撮影を行ったフィルムを元にした映画というだけあって、クロマキー合成を用いて展開させるシーンも多数あるのですが、使いどころが上手い。中でも、ソアリンというハングライダーに乗り、カリフォルニアを飛行するというアトラクションを楽しんでいる際、スクリーンに女性が映って、こちらに語りかけてくるという幻覚のビジュアルはなんともクール。
そして、合成だけじゃなくて、めちゃくちゃ限られた条件の中で撮られた映像も素晴らしい。ジムが見失ってしまったサラを探すシーンでは、背景にパレード用の花火ががんがん打ち上がっていてスタイリッシュ。
『ポンヌフの恋人』で、アレックスが自身の思いを橋上で爆発させるシーンを思い出してしまいました。きっと意識して撮ってるんだろうなー。

○B級映画への愛が伝わってくる唐突な展開
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クロマキー合成で作り出される絵の質感は、間違いなくトラッシュムービーらしさを演出しようと狙ったもの(VFXチームは『グエムル』にメインで関わっていたほど、凄腕のチームなので、もっとかっこよく見せることは容易だったはずですし)だろうし、主人公が囚われの状態から脱するシーンは明らかに射精のメタファーが描かれてますし、映画本編の途中には突如としてINTERMISSION!(いったん休憩!)という文字が黒身で挟み込まれますし、もうこれはグラインドハウスですよね。
お好きなんですねえ。そりゃこういういびつな映画になるのも納得ですわといった具合。僕は好きです。

○不気味な映像とストーリーの裏で積み上げられていくメッセージ
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クビになってしまった現実から逃避しようと、自身にとっての非日常(=父親という役割の放棄)を味わおうと酒をあおり、女をつけ回すジム。その奥さんであるエミリーは頑ななまでに非日常の中でも日常(=母親としての役割)を過ごそうとする。なんてったってキスさえもさせてくれない。ディズニーランドの中で母親として振る舞うため、女になってはいけないのだ。
主人公夫婦をここまで対極的に描いた段階で(+ディズニーをネタにしたという設定も含めて)この映画はディズニールールに対しての反抗と遵守の対比によって、何かを描こうとしていることがおぼろげにわかる。
反抗を重ねていたジムは、結果的にネコインフルエンザで死亡してしまい、敗北を迎える。
彼の死体はレスキュー隊員?によって、あっさりと片付けられ、アメニティも綺麗に整えられ、ディズニーというパワーにやすやすと潰されてしまう。これはディズニーの狂気的、かつ宗教的な世界観に対しての批判と見て取るのがまっとうな理解かなあ、と。
しかし、ラストシーン、ジムは妄想の中で「セクシー」な女性とともにディズニーホテルに入り込んでいき、ジムのユートピアを勝ち取る。それはセックスの匂いもさせないディズニーワールドにとっては、その世界観が侵攻されたという意味においてディストピアを突きつけられる。
驚くほど唐突に入るラストカットは、この映画を意味不明なものにしかねないですが、きっと妄想の中でハッピーエンドを勝ち取るジムを描くことで、結局は彼もディズニーランドの中でディズニー的世界観(最後は必ずハッピーエンドで終わる)に回収されてしまってるんじゃないかなあと。つまり、逆照射的にディズニーの狂気的、かつ宗教的な世界観を描いているといいますか…
いやあ、ブラックでいい映画だなあ、と!

よくなかったところ
未回収、投げっぱなしの演出の数の多さ
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看護師の「まだ感染に気づいていない…「外では気をつけて…」というセリフも、フランス人女性の「やっぱりね、これでわかったわ。任務完了。」というセリフも、股間に打ち込まれた電気銃も、あのペンダントの効力も…と挙げていくときりがないほどの意味不明演出の連発。
考える材料がある程度そろった状態で、すべてを明らかにしない演出は映画を印象づけるものとして、当たり前の手法だと思うのですが、これほどまでに何も材料がそろってない状態で意味深な意味不明シーンを連発されるのはなんだかなあという気分になってしまいました。
どこか不気味な雰囲気を映画に漂わせるためということであれば、あまりにも詰め込み過ぎかなあ、と。

本来であれば、ここまでわけのわからないシーンが連続してしまうと「もっと真面目につくれよ…観客舐めすぎでしょ…」とイライラしてしまうものですが、今作にそれは感じないんですよね。
ところどころにある魅力的なシーンから気合いを入れて撮っていることがわかるからなのか、その空回り具合も分かって、なんとも味わい深い仕上がりになっているんですよね。
まあ、ディズニーランドで映画を完成させたという時点で、制作者の「フレッシュなもの」への挑戦は見えるわけで、これは嫌いにはなれないですよ…!(『ザ・ハリウッド』とは全然違う!!!
魅力的なシーンは、本当に魅力的ですし!

この僕のリアクションを分かりやすーくした海外の反応として「エド・ウッドがディズニーとコラボして映画を撮ったらこんな感じだろうという1本」というものがありまして…まあそういうたぐいの映画なわけですよ…と、なんとも「未公開映画祭」の時のような感想になってしまいました。
それもしょうがないはず。間違いなく「こっち側」の作品ですから!!!
なぜTOHOシネマズ日劇で上映されているのか!興行の谷間にちょうどフィットしたんでしょうけど、なんとも不思議なものです!
「こっち側」の作品が大きめのスクリーンで見られるレアな機会ですし…おすすめです!

あ、あと…ネコはキリスト、かつ、ふしだらな女のメタファーですよね?!

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