インサイド・ルーウィンデイヴィス

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古くて新しけりゃ…コーエン兄弟作品だよ!

88点

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第66回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したジョエル、イーサン・コーエン監督によるドラマ。フォークソングで有名な1960年代のニューヨークはグリニッジビレッジを舞台に、音楽活動に奔走しながらも苦闘するシンガー・ソングライターが過ごす1週間を見つめる。『ボーン・レガシー』などのオスカー・アイザック、『17歳の肖像』などのキャリー・マリガンなど、実力派俳優が結集する。コーエン兄弟ならではのユーモラスな語り口に加え、詳細に再現された1960年代フォークシーンの描写も見もの。
1960年代のニューヨーク、冬。若い世代のアートやカルチャーが花開いていたエリア、グリニッジビレッジのライブハウスでフォークソングを歌い続けるシンガー・ソングライターのルーウィン・デイヴィス(オスカー・アイザック)。熱心に音楽に取り組む彼だったが、なかなかレコードは売れない。それゆえに音楽で食べていくのを諦めようとする彼だが、何かと友人たちに手を差し伸べられ……。
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東京では、えらく前に上映されていた作品ですが、広島でようやく観てきたコーエン兄弟の新作「インサイド・ルーウィンデイヴィス」。

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鑑賞した映画館はサロンシネマです。
サロンシネマというと、ミニシアター文化の歴史にはっきりと名を刻む有名映画館でして、
ぼくにとっては、学生時代から何度足を運んだかわからない、クラシックな作品の素晴らしさを教えてくれた映画館なのです(広島在住歴のある人だと絶対に分かってくれるだろう感覚)。
しかし…(うえの画像を見てもわかるとおり)もう施設の耐久性がヤバく、消防法絡みの問題で移転するとのことで
「これは今の場所にあるうちに巡礼しておかねば…」という気持ちで行ってきました。これが最後の訪問になるかな…と考えると大変感慨深い…
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いやー、味わい深い映画館ですな…
ちなみに、シートは広々でして、上映にデジタル機器は使用しておらず、すべてプリントによるものです…素晴らしい…

さてさて本題。
まずは…良かった!!!
コーエン兄弟作品の関わる作品の中でも「ブラッド・シンプル」「ファーゴ」「ビッグリボウスキ」「ノーカントリー」「トゥルーグリット」と並んで、5本の指に入るレベルの傑作じゃないですかね。
単純なエンタメ度としては、他の作品に劣るものの、ゆっくりと味わうことのできる退廃的な魅力が間違いなくある。
見終わったあとは、かなりダメージを受けた作品でしたが、いやー良かった!!!

いつもだと、このあたりで物語のあらすじをざっくりと記しているのですが、流れとしては「技術はあるけど、才能が足りないミュージシャンがある決断に至るまでの数日間を描いた」だけのもので、ジェットコースター的な起伏は無いので、そこまで書き残しておく必要はあるのかなあ?
というか、早々とこの映画の魅力について書いていきたい!!!
ということで…

よかったところ
○猫のかわいさ、そしてそれが指し示すもの
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いやーなんていっても、主人公のルーウィンが居候していた家から逃してしまった猫、なんともかわいい。
“演技力”としては「アーティスト」の犬っころに劣ってしまいますが、もうなんともかわいいんですよ!
そして、売れない、金ない、家ないのないない主人公による、オフビートで退廃的に紡がれるストーリーの中、猫が登場するシーンだけは、画面がパッと明るくなる(あの毛色ですしね)。唯一ルーウィンが心を開ける相手。
その猫は、ルーウィンが以前組んでいた相棒のメタファーとして描かれていて、猫の失踪(見つけたと思ってからの勘違い)と相棒の死は同様に扱われているんですよね!!!
だからこそ、売り込みの際にレーベルオーナーから「他の奴と組んでやってもらえるなら契約してやる」と言われるシーンでは、猫を見つけたものの勘違いだった経験のシークエンスを観客がリンクさせ、結局他の人間と組んで演っても意味がないことを暗に指し示しているのではないでしょうかね。

○直接は語られないがスクリーンに立ち現れる ある男の強い思い
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ラストシーン、フォークミュージックが時代に取り残されていくなか(ボブディランとしか思えないキャラも登場する)、歌をあきらめようとしていたルーウィンは、死別した相棒との曲を交えたギグを行った。
しかし、ギグを終えると、ある男に待ち伏せされていて、過去の軽率な行動のせいでルーウィンデイヴィスという時代に取り残された男はボコボコにされてしまう。
その男が車に乗って走り去っていくさまを見て、最後にルーウィンが口にするのは「あばよ」の一言。
その一言は、死別した相棒への別れの一言でもあり、フォークミュージックが時代に取り残されていく際の一言でもあり、歌への別れの言葉でもあり…
ひとつのセリフで、さまざまなことを考えさせることができる…これが映画だ(ぞ中島哲也)!!!

○心地よく鳴るフォークミュージック
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ボブディランも未発表曲を提供したという音楽の素晴らしさはもちろん、音楽によって生み出される独特の映画のテンポも素晴らしい。
さすがサム・ライミのもとで編集修行を積んだだけはあるなあ…という思いであります!


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キャリーマリガン(最高にかわいいですよね…………)演じるヒス女 ジーンが、わざわざライブハウスのオーナーとセックスしてまで、ルーウィンを舞台にあげさせたのか、については自分の中で結論づけられてないので、そのあたりはBlu-rayで見返せたらなーと思っています。(投げやり

インターネット上で読むことのできる監督のインタビューに目を通してみると、キャスティングはやっぱり難航していたようですね。
20年間、音楽をやっていたというオスカー・アイザックという男が主人公で良かった!
あの身長の低さがみすぼらしい感じを出してていいんですよ…

実在のフォーク・シンガー、デイヴ・ヴァン・ロンクの回想録が発端ということなので、そちらも読んでみようかと思います。ディランが憧れていたミュージシャンの1人ですよね、たしか。

いやはや、なんともクラシックな作品の魅力的な部分を現代にアップトゥデートしている“感じ”が無意識のうちに分かってしまうのが、コーエン兄弟の魅力なんじゃないかなあ、と考えました。無意識に“感じ”を抱かせるのは、ごく映画的。
まさしく、この映画で主人公が口にしていたように「古くて新しい」魅力に溢れたコーエン兄弟の新作。
間違いなくおすすめです!

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