オール・ユー・ニード・イズ・キル

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原作へのアプローチの仕方に日本映画との格の違いを見せつけられるハリウッド大作…

65点

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桜坂洋のSFライトノベル「All You Need Is Kill」(集英社スーパーダッシュ文庫刊)を、トム・クルーズ主演でハリウッド実写化。「ギタイ」と呼ばれる謎の侵略者と人類の戦いが続く近未来を舞台に、同じ時間を何度も繰り返すはめになった兵士が、幾度もの死を経験し、成長していく姿を描く。戦闘に対して逃げ腰な軍の広報担当官ウィリアム・ケイジ少佐は、戦闘経験が全くないにもかかわらず最前線に送り込まれてしまい、あえなく戦死。しかし、死んだはずのケイジが意識を取り戻すと、周囲の時間は戦闘が始まる前に戻っていた。再び戦死するとまた同じ時間に巻き戻り、不可解なタイムループから抜け出せなくなったケイジは、同様にタイムループの経験を持つ軍最強の女性兵士リタ・ヴラタスキに訓練を施され、次第に戦士として成長していく。戦いと死を何度も繰り返し、経験を積んで戦闘技術を磨きあげていくケイジは、やがてギタイを滅ぼす方法の糸口をつかみはじめる。リタ役でエミリー・ブラントが共演。監督は「ボーン・アイデンティティー」「Mr.&Mrs.スミス」のダグ・リーマン。
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先行上映の直後から高評価の嵐が(少なくともぼくのタイムライン上では)吹き荒れていたこともあって、えらく期待値高めで観てきました。
観賞した劇場はイオンシネマ板橋。大作映画は都心で観ると、えらい混んでいるので、なるべく郊外の映画館で観るようにしているものの「All you need is kill」は、映画.comのサイトを広告ジャックしたり、テレビCMもばんばん流したり、プロモーションにお金をかけていることもあってか、板橋という土地ながら、どえらい客入りでした。
こういう類の映画にたくさんのお客さんが入ることは素晴らしいことですね本当に…!

いつもは、このあたりで物語の流れを記しているのですが、今作はギタイというモンスターまわりの設定が複雑なこともあって、書くのが面倒だなー…と思っていたところ、こちらのブログで懇切丁寧にまとめられていたので、物語の流れを知りたい方は是非そちらに!
原作からの改変点なども指摘されていて、原作未読の人も興味深く読めるかと思います。
ちなみにぼくは
原作小説→未読
漫画→読了
という状態で観賞してきましたよ。
その前提を置いたうえで……

よかったところ
○原作ものを映画へと調理する際の巧みさ
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原作という素材を、映画という料理にする。その調理方法がまあ巧み。
設定、一部キャラクターは原作そのままですが、主人公の役柄は大幅に変更を加え、タイムループの仕組みにも変更を加える。
例えば主人公とヒロインの役柄が原作通りであれば、しょっぱい恋愛モノか、主人公成長型ジュブナイルで終わってしまうと思うんですよね。
この変更で、より多くの人をターゲットにした映画に仕上がっているんだろうなー、と。
そして、落とし込みところを単純な人間ドラマにしないことで「ループ」という面白味あふれる題材を際立たせられているのではないでしょうか!
また、原作ファンが反感を抱くような改変は行わないバランス感覚も流石ハリウッドだなあと思いました。
元ネタが出てこなくなってきている業界と言われて久しいですし、今後ともこの手練れリミックステクニックは伝承し続けてほしいところ!

○戦場の牝犬(ビッチ)ことエミリーブラントの魅力
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ちょっとタイプは違いますが、タイムループが物語の心臓になっている大傑作『LOOPER』で、ライアンゴズリングに対して、意味不明(いい意味)な発情を披露していた彼女がヒロイン役として登場。
この彼女が何度も何度も何度もトムクルーズを撃ち殺すんですね。最高。
ぼくも撃ち殺してほしいものです…

○モンスターの造形
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漫画版に比べて、かなり魅力的なモンスター!!!(というか、漫画版がひどい…
はじめの登場シーンで、なかなか全貌を表さないのも「こやつ!焦らしてきよる!」とアガりました。

僕が唯一マンガに注文をつけたところなんです。マンガが始まるときには、映画での造形がどうなるかも決まっていたので、それを伝えて「小説とも映画とも違う、小畑先生オリジナルのデザインを考えて下さい」と。実際に見てみて、小畑先生の絵にはやっぱりパワーを感じました。

原作者のインタビューを読んでいると、こんな記述を見つけましたが…うーん。
ちなみに、パワードスーツは27〜45kgもあるそうですね。ビジュアルを保つために、ハード面で「リアル」にこだわることは素晴らしい!

よくなかったところ
×典型的ハリウッド構造にしばられた脚本と…
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なんだかんだあっても愛に気づいた2人は口づけを交わす。
「ここは俺に任せろ!」のお決まりセリフ。
なんだかなあ。と思わずにはいられない、これまでに100万回くらい観たことのあるようなシーンはいくつか(いくつも?)あって、その度に気持ちが沈んでいく。
1部にあたる展開はループをしまくって、テンポか良いこともあってか、独創的な構成でアガっていたぶん、2部3部と「ベタ」のつるべ打ちをかまされると「はいはい、結局こいつらは全ての問題を困難の果てに解決するんでしょ…」と一気にキャラクターに興味を抱けなくなり、緊張感がなくなってダレるんですよねー。
あと、あんな未来的な戦争に筋トレは必要なんでしょうか…
アメリカ的なマッチョイズム?

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宇宙人の地球侵略を描いた映画には何の興味もなかったよ。僕が本当に惹かれたのは、トムクルーズ演じるケイジが辿る軌跡のほうだった。
他の人間はみんな同じことを繰り返しているのに自分だけが違うという状態で、戦いの中に何度も何度も放り込まれるというのは僕にとって人生のメタファーだ。現実には自分に世界を変えることはできないし、他人を変えることだってできない。でも、自分自身を変えることができるよね…

監督のダグ・ライマンはこのように語っていますが、たしかに宇宙人の地球侵略を描いた映画には何の興味もないんだろうなー、という最終決戦でした。
もう少し!もう少しこだわってくれたら、後半の失速も軽減されたんじゃないかなあ、と残念な気持ちもあります…が!

みんな大好き戸田奈津子による「俺の胸は感動に震えている ケツから涙が出る」という名翻訳も拝むことのできる今作。
誰もが楽しめる1本であることは間違いないですし、いやーおすすめです!

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