渇き。

kawaki-poster

ぶれない中島哲也監督のすごみは本物か…

20点

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
第3回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した深町秋生の小説「果てしなき渇き」を、『告白』などの中島哲也が実写化したサスペンスミステリー。謎の失踪(しっそう)を遂げた娘の行方を追う元刑事の父親が、いつしか思いも寄らなかった事態に引きずり込まれていく姿を活写する。名優・役所広司を筆頭に、『悪人』などの妻夫木聡、『ゆれる』などのオダギリジョーら、実力派が大挙して出演。中島監督ならではの鮮烈なタッチに加え、ヒロインに抜てきされた新人・小松菜奈の存在感にも注目。
品行方正だった娘・加奈子(小松菜奈)が部屋に何もかもを残したまま姿を消したと元妻から聞かされ、その行方を追い掛けることにした元刑事で父親の藤島昭和(役所広司)。自身の性格や言動で家族をバラバラにした彼は、そうした過去には目もくれずに自分が思い描く家族像を取り戻そうと躍起になって娘の足取りを調べていく。交友関係や行動を丹念にたどるに従って浮き上がる、加奈子の知られざる素顔に驚きを覚える藤島。やがて、ある手掛かりをつかむが、それと同時に思わぬ事件に直面することになる。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

中島哲也が映画ファンからの評価を高めた作品というと『告白』ですが、その作品名を聞いてまず思い起こされるのはこのブログ記事

「映画」というふれこみの『告白』という、CMもどきの単なるかっこよさげで意味を欠いた薄汚い映像の羅列

高橋ヨシキ氏が鮮烈かつ痛快なdisをかましたことで、それまで大絶賛だと作品への評価が(一部の好事家を中心に)一変したことは記憶に新しいのではないですかね。

さて、そんな中島哲也監督の新作となると、一般の方々から、面倒くさい映画ファンまで多くの人が足を運ぶことは容易に想像できますし、その流れには乗っておきたいなあというミーハー心で見てきました。

超話題作ですし、詳細な物語の流れは他の誰かが書かれるかと思うので、あっさりと記しておくと…
(3年前の加奈子の学生生活まわりのエピソードと、現在失踪した加奈子に迫る藤島まわりのエピソードを往復しつつ、物語は進むスタイル。3年前のシーンについては記号的な意味を含ませる意図が強くて、物語の本筋にはそこまで関係がないので、ここでは現在のエピソードを中心に。)
ネタバレしているので注意!!!
—-
取り調べを受けている汚らしい男 藤島(役所広司)
元警察官だった彼は殺害事件の重要参考人として、調べを受けていた。
取り調べを終え、アパートに帰宅すると、離れ離れとなっていた奥さん 桐子(黒沢あすか)から電話がかかってくる。
「加奈子(小松菜奈)が居ないの。本当に知らない?あんたが隠してるんじゃない?」という電話。
藤島は桐子の待つ家へと向かう。
えらく久しぶりにその家には入るらしい。

8/16 6:58
娘の荷物を確認すると、そこにはパケに入った覚せい剤と注射器。さらに神経科の薬袋。
そして、藤島は娘の捜索に出かける。
予備校のロビーで加奈子の友達だったと思われる女の子2人に話を聞く。その内1人の女の子の挙動から、覚せい剤が絡んでいることを確信する藤島。
その足で精神科に向かう。ドクターに娘のことを聞くと「別になんの問題もない、聡明なお嬢さんでしたよ。家庭環境には問題があったようですが。ご存知でしょう。」との一言。
そして、加奈子の中学の同級生に話を聞くためファミレスへ。

8/17 14:10
加奈子の担任であった東(中谷美紀)に話を聞きに行く。
加奈子が惚れていた(?)同級生の男が自殺してしまって以来、不良連中と絡むようになった話を聞かされる。その中心人物であった松永が怪しいと考えた藤島。
そして、夜。動物かのように桐子に迫る藤島。暴力をふるってレイプしようとする。

8/18 10:02
松永家に殴り込みをかける役所広司。母は「あんな奴、息子じゃない。なにも知らない。」としらばっくれるも、そんなのお構いなしに恫喝しまくる藤島。
そして、松永が石丸組に追われていることを知る。松永を追っていた藤島だったが、逆に拉致されてしまい、暴行にあう。しかし、目を覚ますと自分以上にボコボコにされている松永の取り巻きを見る。
そこで、警察時代の後輩である浅井(妻夫木聡)は藤島に対し、加奈子と松永の関係について聞く。それとともに「重要参考人ですから」と藤島のことを張っている旨を知らされる。
そしてその夜。藤島はマンションに帰宅すると、謎の男に襲撃されて「加奈子の隠したとのを出せ」と言われる。迷わず覚せい剤を出すが、そんなものではないと言われ、再びボコボコに。
↓(この辺りから、時制が飛びまくります)
8/19 7:10
加奈子が友人に預けていたロッカーの鍵を渡される藤島。
そのロッカーを開けると、老人とセックスさせられている男の写真とそのネガを見つける。ある1枚の写真を見た途端、藤島は嗚咽してしまう。

8/19 15:16
再びやりあう浅井と藤島

8/19 18:43
写真に写っていた男。その1人ははじめに訪れた神経科医の男。
藤島が問いただすと「誘って来たんだ、あんたの娘が」とのこと。
そして、藤島の過去”加奈子に暴行をしていた”過去について、医師の男から迫られる。

8/20 0:19
石丸組にさらわれる藤島。
そこにはボコボコにされた松永(臓物丸見え状態!)が。
自由すぎる加奈子の行動が自身の組に問題を及ぼしていることもあり、その組のボスらしき男である咲山が加奈子を見つけ出そうとしていて、殺そうとしていることを知る。
そして、加奈子はチョウという男とつながりがあったことを知らされる。
チョウは自分に不都合な人物を殺すため、現職の警官である愛川に殺人を依頼しているとのこと。
加奈子を殺されたくなければ、愛川を殺すよう指示される藤島。
藤島は、まず愛川の家族をばっちばちに締め上げる。

8/20 12:00
藤島と愛川がどこかの屋上で殺りあう。
結果、愛川は窮地に追いやられ、その場に駆けつけた浅井によって、殺される。

8/9 14:24
加奈子と東が同じ車の中に。
東の娘に売りをやらせていたことを教える加奈子。その事実と悪びれない発言にブチ切れた東は加奈子を殺める。

2013 12/24
娘のためにケーキを買いに出かけていた東。
その東の運転する車に藤島が乗り込み、襲う。
一気にスクリーンは白身となり、カメラがそのまま上方向へパンすると、雪原の風景。加奈子を埋めた場所を掘り返すよう指示する藤島。
逃げようとするも逃げられない東。
藤島はスコップを使い、どこに居るのかもわからない娘メ加奈子モを「俺の手でちゃんと殺す!」と叫びながらら辺り構わず掘りまくる。そしてフリーズショット。
—-
日時は記憶している範囲で書いているので、もしかすると間違っている可能性もあるものの、物語の本筋はこんなところですかねー。

よかったところ
○役者さんの演技
kawaki-1
役者のキャスティングは素晴らしい。
なかでも橋本愛はいい役者ですねー。もっと彼女の演技を見ていたかった。いやー本当に良い顔してましたわ。

よくなかったところ
×リアリティが無さすぎるシーンの連打
kawaki-2
驚くスピードで血液は固まるし、登場人物は基本的に不死身スタイルだし、逮捕できるシーンで逮捕しないし、殺したい人間が目の前にいるのに全然殺そうとしないし、どれもこれも全くもってリアリティ(重力)が無い。だから映画に乗り切れない。
なかでも極めつけは、中学生がクラブらしき場所でパーティ主催していて、その中で公然と薬物が使用されているシーンの不自然さ。
クラブをなんだと思っているんですかね…

×意味ありげな演出の数々
kawaki-3
アンドレアス・グルスキーを意識したであろう団地ショットだったり、シネスコなのにクローズアップのショットを意味ありげに連打したり、STUDIO 4℃を使ったアニメーションを挿入したり、ラストのフリーズショットだったり、びっくりするレベルでキッチュにしたクラブシーンだったり、しょっぱなのスプリットスクリーンだったり、謎のモーションブラーも、なにもかもが「意味ありげ」な演出。
だけど、結局大した意味なんて無いんだろうなあと思った次第です。
それを強く感じさせたのが…
タイトルバックはグラインドハウス風で、思わず「おっ!これは娯楽作品であることの意思表示か、いいね!」と(一部の人間には確実に)思わせておきながら、
結局映画の細部を構成するのは、ヘルベチカ(多分)を使った日時設定の字幕表示だったり、全く無意味なヘンリーダーガーのマットを映したり、結局はおしゃれに落とし込みたい、すごいと言われたいということがあけすけにみえてくるつくりですすよ!
小手先だけの「映画的記号を散りばめてますよー」というアピール!シット!
仮にヘンリーダーガーのマットで、加奈子の孤独感を表現したというのであれば、ヘンリーダーガーの人生への冒涜ですわな。とかく薄っぺらい。

kawaki-4
パンフレットに目を通したところ中島監督は「暴力でしかコミュニケーションの取れないロクデナシが父になっていく様を描きたかった」と言ってますが、暴力でしかコミュニケーションの取れない男は『ブロンソン』の方が100倍ビンビンだし、父になっていくさまとか言うてるけど、父の自覚がなければ加奈子を探そうとすらしないでしょう…

とか、ああだこうだと書いてきましたが、いやー中島哲也監督はすごい!!!
あれだけ、高橋ヨシキにdisられておきながら、相も変わらず、意味のない「俺すごいやろ」描写の連続!その曲げないスタイルはある意味、彼の作家性なのかもしれませんが、ぼくは全くもって受け付けられませんでした。
せめて、物語がサスペンスフルであれば、それにノれたら良かったんですが、話もたいして面白くないしノリきれず。

kawaki-5
Twitterにも書きましたが、途中、神経科医の男によって、役所広司が娘を暴行した過去を思いださされるシーンで「いや、俺はそんなことしていない!絶対にしていない!それは加奈子が嘘をついている!」となった方が物語自体は楽しくなったような気がしています。
『バニー・レークは行方不明』じゃないけど、観客すらなにが真実なのか誰がきちがいなのかわからなくなる展開はサスペンスを呼ぶはず(とは言え、原作ありきなので難しいとは思いますが)。

さてさて、鑑賞中は加奈子をファムファタールとして描こうとしているのかなあ、抗いようのない巨悪の象徴として…などなど考えていたところ、こんな記事を発見しました。
どうやら「薬」の象徴らしいですね。

破壊屋:原作だと加奈子が置いていった覚せい剤に藤島が元気づけられるというシーンがありますね。映画だと違う表現になっていますが、役所さんが覚せい剤を使うシーンって『シャブ極道』好きからすると、どんな女優のヌードよりもサービスショットですよね(笑)。
深町:そうそうそう、良いシーンだよね。

とかありますけど、全くリアルじゃないからな!
全く血管の浮き出ていない状態で肘関節に注射するような馬鹿いないから!普通手首にするよ!
「ロック」って言葉も知らないんでしょうねえ。

??「果てしなき渇き」を書くにいたってはそうした若者のパーティとかドラグ事情とか取材をしたりする事はあったのでしょうか?
深町:いえ、一切していないですね。あくまでも個人的な心情や感情から想像をふくらませて。

取材くらいしなさい!!!
リアルにこだわらない作品から傑作なんて生まれないわ!!!

破壊屋:それに反発している様な作品ですよね。悪ガキがタバコ吸うどころじゃない事をやってくれてる。大切な映画です。原作だとHIPHOPが流れるクラブのシーンが、映画だとでんぱ組inc.のアイドルソングになっているという。アイドルソングの方がHIPHOPより狂っているという。色調もカラフルですごくて。暴食的なのにポップというこの映画を象徴するシーンですよね。
深町:そう、そこが『渇き。』で一番感動したシーンかな。若者のパーティが格好良く撮れてるっていう。ヘタすると『マトリックスリローデッド』のださすぎるパーティーシーンになっちゃうから。

まじか…驚くほどダサいクラブシーンでしたけどね……
しかも、アイドルソングは一瞬だけで、その後は基本ダブステップが流れてたじゃん…
正気か?この人たち…と思います。

とは言え、これは原作者のインタビューなので、映画自体は面白いと思われる方もいるかもしれません。
いずれにせよ、若いうちに見た方がいい作品であることは間違いないかなあというのが率直な感想だし、中高生が見て、どのような感想を抱くのか、是非聞いてみたいので、うーん、おすすめです!

広告