『字幕屋に「、」はない 』を読みました

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これまでに1,000本以上の作品の翻訳を手がけてきた太田直子氏が『通訳・翻訳ジャーナル』という季刊誌の中で連載していた内容をまとめあげた1冊。
著者の太田さんは、これまでにも書籍を2冊ほど書かれているそうですが、私はいまさらながら初読です!はい!

“知らない世界を見せてくれる”というのは、あまねく「作品」の価値を判断するうえで、ひとつの基準になるものだと思いますが、この書籍はまさしくそれ。
「字幕」いうと、日本人であれば誰もが見たことのあるものでしょうけど、その実情についてはさっぱりわからない。

  • 予算はだいたいどれくらいなのか?
  • どのような制作フローなのか?
  • どれくらいの日数で作業を行うのか?
  • などなど、疑問が湧いて出てくるレベルで「字幕」は謎だらけ。

    ただし、本書はそのような疑問に答える書籍というわけではない。
    短い文章とイラストで、字幕制作に関わる「恨み節、嘆き節」をトリビアを交えつつ綴ることで“知らない世界を見せてくれる”。
    自虐的で、思わず含み笑いを誘うようなおかしみを兼ね備えている卑近な文章はイイですね。

    そのような著者の「恨み節、嘆き節」のなかでも、

    プライベートで映画を観に行っても、字幕がどうしても気になってしまう。

    という一言は、わかるというかなんというか、笑わせてもらった。
    どんな仕事であれ、職業病ってありますよね…

    その他にも

  • 翻訳料は作品の尺によって決まってくる(タランティーノだろうが、ゲリンだろうが翻訳料は変わらないという恐怖の事実)
  • ゆとり教育によって読解力が下がって来ているという配給会社の見地から、通常考えられないレベルの平易な言葉をセレクトすることがある
  • 習得している言語以外の翻訳業も当たり前に行う(習得言語に1度翻訳したうえで行うそうです)
  • 予告編翻訳は1カットの秒数が本編に比べて詰められがちなので、往々に本編翻訳よりも直接的な表現になっている
  • など、さまざまな字幕制作の“リアル”を知ることができる楽しい1冊。
    おすすめです!

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    「1秒間に4文字が字幕の基本。その限られた文字数で的確に描写を行うことは、とても難しい」ということが、本書では何度かにわたって触れられますが、それを言い訳にして、かの戸田 奈津子氏のようにならないことを祈っていますということで『フルメタルジャケット』でかまされた“なっち文体”を貼って締めっ!

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