グランド・ブダペスト・ホテル

オールドスクールな映画的魅力をアップデートしたウェスアンダーソンの真骨頂

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85点

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「ムーンライズ・キングダム」「ダージリン急行」のウェス・アンダーソン監督が、高級ホテルのコンシェルジュとベルボーイが繰り広げる冒険を、名優レイフ・ファインズを筆頭にオールスターキャストで描いた。ヨーロッパ随一の高級ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」を取り仕切り、伝説のコンシェルジュと呼ばれるグスタヴ・Hは、究極のおもてなしを信条とし、宿泊客のマダムたちの夜のお相手もこなしていた。ホテルには彼を目当てに多くの客が訪れるが、ある夜、長年懇意にしていたマダムDが何者かに殺害されてしまう。マダムDの遺産をめぐる騒動に巻き込まれたグスタヴ・Hは、ホテルの威信を守るため、信頼するベルボーイのゼロ・ムスタファを伴い、ヨーロッパを駆けめぐる。
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予告編で流れてきた、きゃりーぱみゅぱみゅの映画に「メディアミックスもついにここまで来たか…」と恐れおののきながらも観てきました。大評判の『グランドブダペストホテル』。大満足!

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新宿の映画館シネマカリテでは、連日大入りのようですが、自宅の近所にあるイオンシネマ板橋ではこの空きようです。レイトショーということを鑑みても、この客入りはもうさすが板橋…としかいいようの無いレベルですね…
 
 
備忘録+おさらい的にストーリーを記しておくと…
(ネタバレを知っていてもそこまで問題ないスタイルの映画だとは思いますが、ネタバレが嫌な方はざっくり5スクロール分くらいマウス、トラックパッドを動かしてください!!!ラストシーンまでは触れていませんが!!!)
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(1968年)
作家の男が静養を取りにホテルに行く。
他の宿泊客も自分自身と同じく一人客が多いな、などと周りを観察していると、1人他の宿泊客とは様子の違った男を発見し作家の男は、その男のことが気になり、コンシェルジュに確認を取る。
すると、その男がムスタファといyホテルの責任者だということが判明。

彼について詳しく知りたいと考えていた作家の男。
アラビア風呂の中でムスタファと鉢合わせたところ、彼の方から自分に話しかけてくる。
そして、2人は夕食をともにすることに。

同じテーブルを囲みながら、ムスタファの過去の話に耳を傾ける作家の男。
「まずは前任者の話をしよう」と口を開く。

(1932年)←ここからが映画の本編。つまり、登場人物による回想で物語が展開していくスタイルの映画
香りを使うコンシェルジュ、口ひげが特徴的な男グスタヴを求めて、多くの乗客がホテルに訪れてきていた。
そのホテルのベルボーイとして勤務し始めた少年ゼロ。
経験も学も、身よりも無い彼はグスタヴを師事し、父のように接する。
グスタヴも彼の勤勉さ、実直さを評価し父のように触れていた。

そんな中、グスタヴを訪ねてきていた乗客の一人の女性が逝去したことを知るグスタヴ。
別れ際に若干冷たい対応を取ってしまったこともあってか、ゼロを連れて、即座に彼女の元へと向かうグスタヴ。
その道中、列車が急に止まる。時代の情勢もあり、国境が封鎖されていたのだ。そこで、2人の通行証を軍の男どもに確認される。ゼロの通行証に不備があったらしく、一悶着起こる。必死にゼロを守ろうとするグスタヴだったが、列車内で取り押さえられる。
そこに現れる軍隊長。そうやら、彼はグスタヴに接客してもらっていた記憶があるらしく、そこはなんとか通過。

ほどなくして、女性宅に到着。
その女性は伯爵夫人だったこともあり、女性家では遺言の読み上げのため遠い親類もまでもが集まっていた。そして、老後に光を与えてくれたコンシェルジュ、グスタヴに世紀の名画である絵画「少年と林檎」をグスタヴに譲る旨の記された遺言状が読み上げられる。

その内容に反発する一家の者たち。
彼らの反応から、これは絵画をもらえないぞ!と考えたグスタヴは、その絵画を奪って帰ることに。
なんなく奪還し、帰路につく2人。彼らは、その道中この絵を売りにかけるという内容の約束を交わす。

無事グランドブダペストホテルに戻った2人だったが、すぐさま警察が来る。
軍警察の男に殺人容疑で逮捕されるグスタヴ。どうやら陰謀にかけられているようだ。

そして、最悪の勾留所にぶちこまれる。
しかし、持ち前のコミュ力を発揮するグスタヴ。囚人仲間の脱走計画に参加することに。

面会にも訪れ、差し入れや伝言を続けるゼロ。グスタヴは不在の間のホテルをゼロに任せることに。
そんなゼロはパティシエの娘アガサと婚約する。
差し入れで持っていっていた彼女のケーキに。その中にミニハンマーを忍ばせ、ゼロも脱走に向けて暗躍。そしてなんとか脱走するグスタヴたち。

(ここから、グスタヴ・ゼロ vs 遺産を渡したくない一家の連中という構図が強化
 一家の連中の敵にあたる人間がどんどん殺されていく)

もろもろありながら、グスタヴ・ゼロは雪山に逃げ込む。一家による殺し屋との一騎打ちに打ち勝つグスタヴたち。

命からがら、ホテルに戻るとグランドブダペストホテルはファシストたちの兵舎となっていた。
そこで絵画を巡って繰り広げられる銃撃戦。

一家の連中は、遺産相続事件にかかる人たちを殺し、その証拠を奪い去っていた。
その中には絵画の相続権に関する遺言状も。
しかし、その銃撃戦のさなか隠された遺言状が見つかる。そこにはその絵画をグスタヴに譲る旨が記されていた。そして、泥棒、殺人いずれもの嫌疑から解放されるグスタヴ。
逃げ切れない事実を目の前に逃亡する一家の長男だった………………
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といった流れです。

 
"Fantastic Mr. Fox" - Photocall
ウェスアンダーソンというと、それはもう偏執狂的に信奉している方々が多い印象があるので、あまり下手なことは言えませんが、僕としてはそこまで思い入れのある監督というわけではなくて、『ムーンライズキングダム』に関しては、本編上映中ずーっと寝てしまっていて記憶に残っているのはあのかわいいエンドロールのみという始末。
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』はその脚本の緻密さといろいろなものがほだされるラストに感動しましたし、『ファンタスティック Mr.FOX』はあのストップモーションに大変わくわくしたのですが、決して思い入れのある監督というわけではないんですよね。
何か思いがあるとしたら「なんかモテそうなルックスで、おしゃれな映画を撮ってるよなー」くらいのもの。
だったのですが!それは僕の見る目が無かった!
それくらい、この作品にはびがっという気持ちでいっぱいです。
今年1番「鑑賞時間を短く感じたで」賞 最有力候補!(安直すぎる…)
 
 
よかったところ
○クラシック作品への深い愛情
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変人たちが他人を振り回し振り回される様を楽しむコメディであり、その魅力は「もう、勝手にやってろ」と笑顔で言える楽しさ、となる。ちなみに「スクリューボール」とは、野球の変化球から来ており、予測不可能な変化球の意味が一般人には予測不可能な変人の意味へとなった。もう少し定義を補足すると、絶対的な男女の愛の存在、人間が状況を振り回し映画を進めるといったことが必要不可欠となってくる。
(http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Stage/4989/scerwballcomedy.html)

という“スクリューボールコメディ”というジャンル映画に明らかに目配せをした作りには驚かせながらも、その映画オタクっぷりには思わず嬉しくなってしまいました。
こういったジャンル映画を下地にしながらも、ウェスアンダーソンの特徴であるカメラの高速パンや、構図整理、傷つく者の存在などなどはそのままで、クラシックな映画に漂う楽しさと彼の作家的魅力が、どちらにも傾かず、うまいバランスで共存していたなーと。それがこの興行成績にも結びついてるんじゃないですかね!

○さまざまな手法の詰め込み
・豊富な撮影素材
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雪山でのチェイスシーンに代表されるような、ミニチュア、ストップモーションアニメを豊富に使用した映像はとても楽しい。
下手にCGを使うより、ミニチュアだとか、ストップモーション、マットペインティングなどを使った映像の方がぐっと来るのは気のせいですかね…否、懐古主義ではないはず!

・スクリーンのアスペクト比による表現
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映画内で描かれている年代によって、スクリーンのアスペクト比を変えてくる狡猾な感じ。
それにともなって、レンズなども変えているようで、大きなテーマのひとつである「時代の変化」を視覚的に、明確に表現。好きですよ!(ちなみに上の画像は1:1.37のアスペクト比でアカデミー比と呼ばれるそうです)

この他にも、物語中盤に描かれる電話連続シーンや、指チョンパ、生首ドーン(観た人にしか伝わらない文書…)のカット割りでは『ジョーズ』のショッカーシーンをを越えたか?!と思うレベルの巧みな編集テンポ。そこだけでもいいから、全映画作者に観てほしい!

○衣装デザインのきれいさ
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衣装デザインは「時計仕掛けのオレンジ」などで知られるミレーナ・カノネロ。
グスタヴのピンキーリング、アガサのペンダントなどは職人に作らせた小物だったり、その他のコートやアクセサリーなどはFENDIが作っているとのことで、視覚的な部分の細部にこだわりを見せるのもウェスアンダーソンらしさですね。

○ラストの社会的な落とし込み
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ラストシーンに関する名言は避けますが、ユダヤの忌まわしき歴史を感じさせるラストで落とす。
これまでの(僕が観てきた)ウェスアンダーソン作品には描かれなかったようなトピックですが、彼は社会的なトピックの描き方も巧み。映画自体がそのイデオロギーに飲み込まれないバランスで入れこんでくる。これは見事!
甘美な世界観が融解していくさまは、まあカタルシスを感じてしょうがなかったですよ!

いやはや、よかったところがあまりにも多くなってしまったので、今作に関してはよくなかったところは無しということで!
それくらい満足感に包まれる映画でした。
 
 
ここのところ「作り手が楽しんで作っている作品は最高だし、その逆もしかり」と、常々書いている気がしますが、今作はウェスアンダーソンがやりたいことをばりばりとかまして、それを楽しんでいるさまが容易に想像できることも魅力的。いやーおすすめです!
おしゃれな方々だけが見る映画にしておくのはもったいない!おすすめです!

元ネタであるツヴァイクの著作は読んだことが無いのですが、彼の著作に触れてこそ理解し、味わえるんだろうと思うシーンもいくつかあったので、これからチェックしようと思います!

ちなみに公式ホームページでは、ポスターや場面写真、レターセットやケーキボックス、特製カードのPDFがダウンロードできるようですので、かわいいもの好きな方はぜひチェック!

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