『父と息子のフィルムクラブ』を読みました

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数年前に空中キャンプでおなじみの伊藤聡さんがラジオで紹介していた1冊をようやく購入。


「自分を縛りつけてくる学校に行きたくない」と考えるヒップホップ好きの少年。
その息子の思いに対し、父は「ドラッグには手を出さない」「週に3本一緒に映画を見ること」という条件を出すし、学校をやめることを許す。
そして二人はまず「大人は判ってくれない」、その次は「氷の微笑」。恋愛事件に息子の裏切り、そして自らの失業のときも、ずっと映画がそばにあった。あれから四年、いま新しい関係の扉が開く。


高校をやめてしまったジェシーは、女の子のこと、ドラッグ、友人関係、仕事、親子関係、ラップ…
などなど、思春期らしいさまざまな悩みを抱えていく。
映画評論家だった父は、そんな彼の時々の悩みに対し、処方箋を出す医者かのように映画をチョイスして「週に3本一緒に映画を見ること」という約束を果たして行くんですね。その時々で一緒に見る映画もさることながら、その映画への補足説明がなんとも素晴らしい。
(ぼくにもこんな父がいれば…と誰もが思うはず)

 
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例えばジェシーが友達のラッパーとコカインをやった翌日、バッドな気持ちになってしまっている時は、1シーンだけ見てほしいと前置いたうえでフェリーニの『甘い生活』のラストシーンを見せながら「パーティに明け暮れている主人公は、もう人生のピークを過ぎていて、あとは下る一方なんだ。自分でもそれを承知しているし、海辺の少女もそれを知っている。でも、おまえは、おまえの人生は、まだはじまったばかりだ。洋々たる未来が前途に待っている。それをドブに投げ捨ててしまうか否かは、おまえ次第なんだからね」と声をかけ、その翌日には“いったい誰がーーたとえコカインとテキーラの二日酔いでへばっているティーンエイジャーだろうとーーこの映画のラスト・シーンに感動せずにいられるだろうか?”と考えながら『素晴らしき哉、人生』を一緒に見る。(で、できた親…羨ましい!)

 
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そうした生活を続けているうちに、ジェシーは自分自身のお気に入りの映画を手に入れ、何かにつけて見返すこととなる(その映画は『恋する惑星』)。本編自体で触れられている場面は少ないものの、彼が映画に救われていることがはっきりとわかる素晴らしい描写で、自分自身の経験も振り返って思わず感動。

「ぼく、スピルバーグって、もっと薄っぺらいやつだと思っていたよ」という台詞に代表されるように、これまでほとんど映画に興味の無かったジェシーだったが、映画にのめり込んでくる(文化的な素養を身につけていく)うちに、趣味の延長として行っていたラップも変わっていく。
はじめは、いわゆるサグいラップ(世間的ヒップホップイメージに最も近いラップ)をしていたものの、だんだんと身の丈にあった、身の回りのトピックを取り上げる(彼にとっての“リアル”なラップ)ようになり、白人スノッブである父も、思わず魅力を感じてしまうという流れは感動的。

 
ジェシーの精神的成長とリアリティのある家族愛が映画をエンジンにして紡がれる一作は、自身の家族のことを下敷きに創作されたとのことでして、映画好きの方にはもちろん、文学好き、ヒップホップファン、はたまた実話もの好きな方にもおすすめです!!!
いい本だった!!!

最後に著者のデヴィッド・ギルモア氏のインタビューのリンクを張って、しめっ!

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