ディス/コネクト

スクリーンから目が離せなかったり、見終わった直後は誰かと感想を喋りたくなったり。
映画の歓びを味わえるクラシックなマルチパートサスペンス!クール!

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88点

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SNS上で起こった事件をきっかけに、心の絆を取り戻そうとする人々の姿をサスペンスフルに描いた群像ドラマ。ある少年が、SNS上での嫌がらせを原因に自殺未遂を起こす。しかし、仕事ばかりで家庭を顧みなかった父親は、息子がなぜ自殺を図ったのかがわからない。一方、嫌がらせをしていた少年は、元刑事の厳格な父との父子家庭で、父親は威厳を示すことで愛情を伝えようとしていたが、少年はそんな父から愛情を感じるとることができなかった。互いの気持ちを知らずにいた2組の親子を中心に、つながりを求めてネット上をさまよう人々が、事件をきっかけに再び絆を取り戻そうとする姿を描く。監督は長編ドキュメンタリー「マーダーボール」でアカデミー賞にノミネートされた、ヘンリー=アレックス・ルビン。出演はジェイソン・ベイトマン、アレクサンダー・スカルスガルド、ポーラ・パットンほか。
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映画の日、新宿バルト9で見てきました『ディスコネクト』。
いやー、映画の日なのに1100円を払うというのは不思議な気分ですね
新宿バルト9、しかも映画の日ということで、客席はほぼ満席でした。

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早速、話は本筋から離れてしまいますが、バルト9にはこんなアトラクションが設置されていました。
どんなもんやろなーと思って気軽な気持ちで入ってみましたが、あまりの不気味さに一瞬にして退室…

さてさて、話を戻して『ディスコネクト』について。
うえに残した物語のあらすじにあるとおり、話の展開はマルチパートなだけあってわりと複雑。

1.SNSによる成りすましイジメの標的となった少年とその父親。
2.チャットが原因で個人情報を盗まれた夫婦。
3.成りすましイジメを行った少年親子。その父親はセキュリティ専門家。
4.ポルノサイトに出演する未成年者に取材する女性TVレポーター。

という4つのコミュニティが絡み合って関係性によって物語が織り成されていくスタイル。
例えば、成りすましイジメを受けた少年の父親は4.で登場するレポーターの勤める会社の顧問弁護士、成りすましイジメを行った少年の父親は2.で登場する事件を依頼される探偵、だとかだとか。
そのように複雑な関係性だからといって、決して関係性の分かりづらさは一切感じさせることはない。それぞれのキャラクターを丁寧に描いて、キャラクターを立脚させているからでしょう(俳優陣の熱演によるところも多い!)。
『バベル』の多層構造性に『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』的な親子関係感と『ナッシュビル』の複雑な人間関係の絡み合いを混ぜて、丁寧に成形した印象といったらわかりやすいですかね。

と長々と前置きしたのは、あらすじを書く体力・記憶力が無いからです。
ざっくりと内容をつかんだうえで、その本筋は是非ご自身の目でチェックしていただきたい!(ということで、今回はネタバレなしです!)

ということで、早速いつもの調子で本題に入っていきますと…
よかったところ
○カメラワークによる緊張感の持続
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サスペンスを撮るにあたって、最も重要な技術が、いま映されている画面をいかに注視させるか。というのは映画における定説(画面効果に自覚的であるか否かということ、あのヒッチコックの有名な螺旋階段のセットがわざわざ2つも作られたように)。
それについて自覚的なのか否かはわからないですが、今作の監督ヘンリー=アレックス・ルビンは、さすがコマーシャル出身の人間というだけあって、観客の情感を映像でコントロールするのが、まあ上手い。
それでいて、コマーシャル出身の映画監督が陥りがちな、“それらしさ”だけで無意味な映像の羅列という残念な事態(中島哲也が高橋ヨシキ氏にボロクソに叩かれていたような)にハマってしまうこともなく、タイトに、記号的な映像を緩急巧みに操る。
映画好きの嫌なところで、映画を見ていても映画を楽しむ気持ちから離れていく(映画を見ていても編集の巧拙さだとか、セリフの下手さだとか、観客のマナーだとかが、本筋から離れていたことが気になって仕方なくなる…)という最悪の自家中毒に陥りがちな僕ですが、この映画では終始画面に没頭していました。

○ヌーヴェルバーグ仕立てのラスト
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サスペンスなのでラストシーンについての直接的な言及は控えますが、悲劇的とも希望的とも取れるラストは、ヌーヴェルバーグ仕立てな味つけ。(もうほとんど、直接的な言及になりますが「大人は判ってくれない」のラストシーンのような、観客に解釈を委ねるスタイル。さすがに「大人は判ってくれない」ほど強いシーンでは無いですが…意識はしていると思います)
IMDbをチェックしていると「最後までイカせてくれない売春婦のようだった。結局は自宅のバスルームでヌかないといけない」という批判もあったし、賛否両論を呼ぶラストシーンでしょうが、クラシックな脚本の魅力を現代風にアップデートし、引き継いでいるという点でクール。

○映像の見せ方の話
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カメラワークのうまさにも繋がる話ですが、映像の見せ方がまあ上手い。
後半、ストーリーの盛り上がりが頂点に達する決戦シーンで、突如として挿入されるハイパースローモーション。耽美的でした。
他にも、背中追いのショットで緊迫感を持続させたり、ロングショットで画角を狭くするというカメラセッティングを多用することで閉塞的な状況を表現したり。
かと、思うと決戦シーンでは一気に引きの絵。盛り上がりが頂点に達する場面では、誰がどう動いているかをはっきりと見えるようにし、関係性を生々しく描く。
このあたりの緩急のバランスも素晴らしい!

よくなかったところ
×キャラクターの行動原理の腑に落ちなさ
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ベンを自殺に追いやった男の子ジェイソンの父であるセキュリティ専門家のマイクが、息子のことを思ってか、その証拠を削除するシーン。その気持ちは現実味もあって、わからいでか。
ただし、それをやってしまうと、この家族だけが悪者になってしまう。そして、ジェイソンがあのタイミングで父に怒りをぶつけるのは、はなはだおかしな話。そして、それを正面から受け止める父はちょっとヤバい人でしょう…

 
いやー、評判は良くもなく、悪くもないようですが、僕は大満足でした。
スクリーンへの求心力をビンビンに体感できるという点では、パシフィックリムばりの強さといっても過言ではないレベル。それだけで十分!そんな中でサスペンスが展開されるとなると、それはもう夢中ですよ。
観客の評価をパックリ二分している最後の投げっぱなしについては、過ぎてしまったことを認め、それに向き合うこと。その必要な痛み。その絶望の淵で彼らは身体的な接触の重要さに気づく。
と解釈していますが、どうですかね?!
映画の前半は、身体的な接触を極力描かず、話が展開されるんですね(うえにも写真を貼っていますが、セキュリティ専門家の親子は父と息子の触れ合いですらiPadを間に挟み、直接的な身体接触を行わせないレベル)。そして、ラストの盛り上がりが頂点に達するシーンでは、それぞれのキャラクターがハードな身体的接触を伴う(これに至ってはわざわざハイパースローモーションで捉える!)。
その瞬間、固まり切った人間関係は融解に向かう、ということで、うえのような解釈に落ち着きましたが、どうですかね?!(2回目)

とこんな具合で、見ている最中は画面に夢中になって、見た後には、すぐにその映画について喋りたくなる。そういった映画の本質的(そしてある意味牧歌的)な歓びを感じた映画でした。おすすめです!


ちなみに、物語の中心となっていたナードな少年ベン役を演じていたジョナ・ボボは、俳優活動のかたわら、バンド活動に夢中なようです。YouTubeにこんな動画があがっていましたよ!
現実の彼はリア充です!素晴らしい!

監督のヘンリー=アレックス・ルビン、これはもう少しdigらなければ!と思ったので、時間を見つけて、彼のディレクション作品をまとめようと思っています。

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