静謐なホラーがお好きな方に(のみ)おすすめのカニバリズム!岩波文庫的ホラー映画!

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50点

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メキシコのホルヘ・ミッチェル・グラウ監督が2010年に発表した作品を、「ネズミゾンビ」「ステイク・ランド 戦いの旅路」などで注目されるジム・マイクル監督が英語リメイクしたカニバリズムホラー。カンヌ映画祭監督週間、サンダンス映画祭などでも上映され、残酷で衝撃的な内容が話題を呼んだ問題作。ニューヨーク州北部の片田舎で、一見すると平凡で慎ましい生活を送るパーカー家は、母親のエマが不慮の事故で他界したことにより、変化を余儀なくされる。美しい姉妹アイリスとローズは、それまで母親が担っていた、一家に隠された「秘密の儀式」を行うことになるが……。
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ベジタリアン生活を続けていた私ですが映画『肉』封切り日に観てきましたよ!
公開は新宿武蔵野館での上映のみということもあってか、レイトショーにも関わらず100名弱ほどの客入りでした。
「こういった類の映画にしては多い!すごい!」と思っていたんですが、今作もあれみたいですね、オシャレウェブメディアCINRAで取り上げられていたんですね。
なるほど!たしかに、武蔵野館らしい方とお洒落なキッズの方々とに客層は分かれていました…

さてさて1番上にも書きましたが、まあ、まあ、静かな映画ですね!
まるで岩波文庫的なインテリ感、岩波ホール的な静謐さを持っている感じでした…
最近観たホラー映画だと『サプライズ』(感想はこちら)や『SAFE HAVEN』(感想はこちら)、エヴァンゲリオンだと『序』よりも『破』、人生ベスト作品が『悪魔の毒々モンスター』(感想はこちら)という私のような人間には、あまりにも動きが少ないように感じられました…

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ちなみに武蔵野館おなじみのディスプレイはこんな感じ。

ストーリーはというと
——
町に嵐が訪れている中、嵐が来る前に買い物を済ませようと、1人の女性が車で買い物に出かける

女性は、なにか宗教的なことを口走りながら店に入る。
悪天候による気圧の悪さからか、体調が優れない女性だったが商品を購入。
しかし車に戻る途中、吐血してしまう。自身のさまに驚いた女性は立ちくらみをおこし、川の中に落ちてしまう。

家では2人の姉妹、そして幼い弟がさきの女性の帰りを待っている。

そんな中、家に戻ってきたのは警察?と父。
2人の姉妹は母が亡くなってしまったことを知り、悲しみに暮れる。

しかし、最も精神的に挫傷していたのは父だった。

そんな父に対して、隣人のおばさんは気遣いの一言をかけてくれる。

姉妹は父から母の死について聞かされるとともに、2日後に予定されていた子羊の夜(?)は決行する旨を聞かされる。
母が死んだ直後なのに?と困惑するも従う。どうやら父は絶対的な存在のようだ。

そんな中、母の遺体の確認をしてほしいと1人の医者が訪ねて来る。
それに応える姉のアイリス。
検死の結果、母はパーキンソン病を発症していたことが判明する。

翌日、母の葬式を迎える。
アイリスの同級生だった男も参列する葬式で母への弔辞として、宗教的なことを口ずさむ父。

その帰りの車中「お母さんが居なくなったから、お前が担当するんだ」という父の言葉とともに姉のアイリスは父から一冊の本のような日記を手渡される。
その日記には子羊の夜(?)についての色々が書かれているようだった。

妹のローズとともにその日記を読むアイリス。どうやら子羊の夜(?)は、1700年代からその一家の伝統として行われ続けているらしい。

その夜、葬式に参列していた男が家を訪ねてくる。彼はアイリスの片思い相手だった男のよう。いまは地元の保安官補となっている彼から労わりの言葉をかけられるものの、子羊の夜(?)のことで頭がいっぱいだったのか、そっけない態度を示す。

引き続き、父から受け渡された日記を読む2人。その日記によると、先祖が止むに止まれずカニバリズムをしていたことが記されていた。それが儀式として一族の伝統として残っているようなのだ。

そんな中、検死を行った医師は愛犬を引き連れて散歩に出かけていた。
地面の一部をここ掘れワンワンスタイルで、執拗に嗅ぎ回す犬。少し掘ってみると骨が出てきた。

娘が行方不明になっていた医師の男。人骨を不審に思い、その骨を持ち帰る。調べてみたところ茹でられた人骨のようだった。

そして儀式当日。
アイリスとローズは、離れ小屋の地下室に向かう。そこには両手両足を鎖で結ばれた若い女性が。
儀式を結構することに、生理的な嫌悪感を抱いてもたついていたローズに対し、恐怖にむせび泣く女性は抵抗するも、アイリスに後頭部を鈍器で殴られ、絶命。
2人とも、一族の伝統だからと、感情を押し殺しながらいやいや女性の命を奪う。

死んだ女の服を剥ぎ取り、台の上に乗せる。
口紅を手に取り、切断するラインに沿って身体に印を付けていく。

切断した肉を元にシチューのような料理をつくる2人。
そうして作られた料理を正装した家族4人で囲む。
これが、一族の伝統として残っていた儀式のようだ。

医師の男は地元の保安官に人骨を見つけた件を伝え、捜索の強化を嘆願するも相手にされない。

しかし、茹でられた人骨。明らかにおかしいと思っていた医師は、保安官補の男に声をかける。保安官補の男は捜査に協力することに。

医師が人骨を見つけた場所(一家の裏を流れる川)に向かう保安官補。

彼が川の中を網を使って捜索するさまを目にするアイリス。
これはマズイ!と思い、何をしているか彼に尋ねる。

人骨を探している旨を知るアイリス。これはマズイ!と思い、「上流にある一家の墓地から流れてきているのかも」と声をかけ、そこまで案内することに。

森を分け入って現場に向かう保安官補の男とアイリス。
もろもろありセックスすることに。
挿入していると、後ろから父親が現れ、保安官補を殺害。

好きな男とのセックス中に彼を殺されてしまったことに慟哭しながらも、父に言われたとおり家に帰るアイリス。父には逆らえない。それだけ絶対的な存在なのだ。

娘の行方不明と自身の見つけた人骨が関係性を持っていると勘繰った医師は引き続き自主的に操作を続けていた。
そんなおり、映画冒頭で亡くなっていたアイリスとローズの母である女性の検死のことを思い出す医師の男。パーキンソン病の症状、それと類似するその他の病気について調べていると、食人を原因として発症するクールー病(実際にパプアニューギニアで蔓延した病気)にたどり着く。
その奇病が身体にきたす症状は、母のそれと同一だったのだ。

その旨を保安官補に電話で伝えようとするも、彼は殺害されている。
そして携帯電話は父が持っている。

電話がつながらないこともあり、不審を確信に変えた医師。
娘を殺し、食べた男に復讐しようと警察へ行き、受付の女を犬で引きつけ、その間にハンドガンを盗み出す。
保安官補に向け「パーカー(一家の父)が怪しい。これから向かう。そちらで落ち合おう。」とメールを入れる。
そのメールを見る父。

そんな中、一家は二日目の食人を始めようとしていた。
その料理に父がヒ素を入れていたことを発見するローズ。(父にもさまざまな思いの揺れがあったのだろう。この一族の忌々しき伝統を終わらせようとしていたのかもしれない)ヒ素の入った料理を口元に運ぼうとした瞬間、医師の男が部屋に入ってくる。

医師の男と父の一騎討ちに。
医師の「娘を食ったのはお前か」というストロングな問いかけにのらりくらりとごまかす父パーカー。

向き合っていた両者は互いに発砲。
すると、そのざまを見ていたアイリスが医師の身代わりとなるかのごとく飛んでくる。
それもあってか、父パーカーを瀕死に持ち込んだ医師。
その間にローズと弟は走って隣家に逃げていく。
瀕死かと思われた父は立ち上がり、アイリスの手当てをする医師の頭をフライパン?で殴打。

そして、ローズと弟の後を追う。
隣家になんとか逃げ込んだ2人だったが、父はその家のドア窓をぶち壊し、中に侵入。
その間に隣人は殺されてしまう。
追い詰められた2人は父に促され、食卓に戻る。
何事もなかったかのように食事を再開させようとする父。

父は精神的ショックを受けているローズにハグ。それに応えるローズ。と思いきや、突如として父の首元に噛み付く。
それを合図にアイリスは父の手の甲をナイフで一突き。
そして2人して父の身体に噛みつき、引きちぎりまくる。
それにより父は絶命。

アイリス、ローズ、そして彼女たちの幼い弟3人で車に乗り込み、町を出るシーンで映画は終了
——
嵐による洪水ですとか、弟まわりのトピックは除いて書いておりますが、ざっくりとこういった感じです。

いやーオリジナルである作品『Somos lo que hay』は恥ずかしながら未見なのですが、そちらの設定はメキシコシティに食人家族の父が死に、父の代わりに十代の子どもが狩りを行い、儀式の食事を一族に用意する責任を負わされる…というものだったとのこと。
そっちの方が面白そうな気がしないでもないですが、まあ今作についていつも通り書いていきますと…
 
 
よかったところ
○女の子がなんとも可愛い!
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特に妹のローズ役であるジュリアガーナーは、陶器のように美しい。素晴らしい。
姉のアイリス役アンビル・チルダーズと行われるレズくさいシーンは良かった…

○ほぼ唯一の動きのある絵、ラストシーン
画像は見つけられなかったのですが、ラスト間際の父親食いちぎりシーンは超映画的、と言うか記号的な魅力溢れるシーンでとても良かったです。静謐な映画の中、唯一といっても良いくらい動きのあるワンシーン。わかりやすい記号性を持ったシーン。強い!

よくなかったところ
×残酷描写からのあからさまな逃げ腰
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ノーカット完全版上映!などと騒がれていますが、残酷描写はほとんどありません。
不穏な描写がただただ続くのみです。その点についてはパンフレットでも監督が語っていましたが「従来のカニバリズム映画のように、身体を切り刻むシーンを直接的に映像化することはしたくなかったんだ。」とのこと。
それを求めて来ている人も多いと思いますけどね〜。
そんなことを言うのは、大きなお世話だし、同一ジャンルの映画について他罰的に言及することは賢いことではないと思いますよ…

×耽美な世界観
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これは好き嫌いが分かれるというだけで、映画の汚点というわけではなく、僕の肌に合わなかったというだけなんですが、うえにも書いたとおりサービス精神のかけらも感じられなかったというのが本音。

×題材の素晴らしい素材を活かしきれてないような…
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表現したい耽美な世界観はわかる、そして、荒唐無稽な設定を宗教、環境、家族(という断ち難い関係性)といった文化的なトピックを用い、信憑性を高め立脚させることで、設定自体では無く、それを支えているトピックの文化的本質に目を向けさせる映画というのはわかる!わかるのですが、食人というすばらしい題材なんだから!せめて、せめて!人肉を啜り食うシーンくらい、音声を突いてほしかった…
まあ食人映画で言うとイーライ・ロスの『グリーンインフェルノ』に期待ですかね!
 
 
パンフレットを読んでほーほーと思った監督の言葉を引用しておくと…
「宗教というものは、始まったところから、破たんしてしまうことがよくある。人々は以前よくやっていたからという理由で深く考えもせず簡単に何かをしてしまうような、盲目的な信仰を持つことがある。それは罪悪を感じさせずに、大勢の人々を説得させることのできる唯一の手法だと思った。(中略)たとえ恐ろしく狂っている行為だとしても、信頼している人が教える教義ならば信じ込むと思わないか?」という言葉。
だがしかし!その前提を描きながら、その先までも描いている作品こそが素晴らしい作品になりうると思うんですよね…『キャリー』のように…

さてさて「肉」と言うと、宣伝担当の方がこのようにTwitterで楽しげなプロモーションをしてましたね、と紹介したいと思ったのですが。私のクソOSマシンではTwitterの埋め込みができず…
公開日まで毎日肉を食べるというばかばかしいプロモーションをしていましたね。素晴らしいバイブスだと思います。びがっ!

残虐なホラー映画が好きな方よりも、サスペンス好きにすすめたい。
そんなノリでおすすめです!

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