さらば、わが友 実録大物死刑囚たち

saraba

96点!!!

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一度死刑を宣告されながらも、法律闘争によって出所した囚人と、獄中で共に生活した死刑囚たちの姿を描く。終戦後、暫くして、防衛庁に乗り込み数千万円の公金を強奪した、実在の元死刑囚K・Oの体験をもとにした原作の映画化で、脚本は「真田幸村の謀略」の中島貞夫、「原子力戦争 Lost Love」の鴨井達比古、「トラック野郎 熱風5000キロ」の中島信昭の共同執筆、監督も同作の中島貞夫、撮影は「動乱」の仲沢半次郎がそれぞれ担当。
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久々に来たユーロスペース。
観てきた映画ですが、拘置所での交流をベースに物語が進むというポイントにアツさを感じて『さらばわが友 実録大物死刑囚たち』をチョイスしました。
どうやらユーロスペースでは現在「第三回死刑映画週間 国家は人を殺す」というTHE 社会学☆といった特集上映を行っているらしく、今作はその中の1本。

今作以外では
『執行者』
『最初の人間』
『声をかくす人』
『軍旗はためく下に』
『約束』
『塀の中のジュリアス・シーザー』
『ヘヴンズストーリー』
を上映しているとのことです。
気になった方は第三回死刑映画週間 国家は人を殺すからチェックしてみてください。
一週間限定の上映なので、上映開始時間に注意!

飽くなき抵抗と邁進で自分の人生を切り拓く漢の姿に号泣!!!!!

「これは、俺の映画だ!!!」と思える人生2本目の映画でした。
(ちなみに1本目は塚本晋也監督の『KOTOKO』で、ラストシーンの少年と全く同じ場面に遭遇しているからという理由。あまりの号泣っぷりに武蔵野館の席を立てなかったという女々しさを発揮しました…)
『さらば、わが友 実録大物死刑囚たち』
まあ感動しましたよ。まあ感動しましたよ!!!
いやはや、その感動は僕自身が同じような環境に身を置いたことがあって、その時の自分自身の心境と照らし合わせながら観たことによるものだと思うので、この記事を読んでくれた方に刺さるのかは不明ですが、この興奮を誰かに伝えずにはいられない!書く!
ということで、書く準備をすすめていたものの、画像がほとんど見つからなかったので、今回の記事はほぼほぼテキストのみの更新であります。すみません。

そして、いつもとは構成を変え、この映画の特に良かったポイントである「勾留が続いている人間の精神状態の描写の丁寧さ、そこでの特異な人間関係で現れるエモーション」を列挙するスタイルで書いていこうと思います。とにかくそれが良かったので。



物語は主人公の大沢謙一(磯部勉)が事件を起こすシーンからはじまります。
その後、愛人を身ごもらせながら、逃避行を続けるものの、妊娠した子供を一緒に育てていこうと愛人に告げた瞬間、大沢は逮捕されてしまう。
そこからがこの映画の本筋。
はじめはキチガイのふりをして、死刑からの減刑を試みたりするのだが、拘置所での囚人同士の触れ合いを通じて、気を確かに保ち、生への執着に邁進するというもの。
映画の半分は拘置所内での人間関係の描写に終始するんですが、それぞれの精神状態の描写がまあなんとも丁寧かつリアリティにあふれている。
それでいて、映画的エモーショナル溢れるシーンの連打なんですよ、本当に。(しつこい…!
では挙げていくとします。

①何度も何度も面会に来てくれる愛人に自ら別れを告げる大沢の姿
→壁の中に居ると、外に居る人たちへの罪悪感で押しつぶされそうになるし、それが家族ないし、恋人となるとその感情はひとしお。
彼は別れを告げる事しかできなかったんですよね。
自身の辛さをさしおいて、相手のことを想う大沢の男らしさに涙。

②同じ房で暮らしてきた仲間の1人に死刑のお迎えが来てしまう
→迎えが来た囚人は絞首台へと向かう際、仲間達に向かって感謝の言葉を投げかけ、投げかけられた者たちも、その男へとメッセージを送る。全てを覚悟している男たち同士の感動的なエール交換!

③夫が死刑から逃れられることを信じ、苦しい生活を続ける奥さんとその子供達
→檻の中で孤独に暮らしている時も、外では自分のことを想い、待ってくれている人が居るという事実、そしてそんな人たちが居ながらにして罪を犯してしまった悲哀に涙。

④盲目の母の治療費をまかなう為に犯してしまった強盗殺人容疑で逮捕されている男は、鉄格子を切って脱走し、母と妹の住む家へと向かう
→妹は脱走してきた兄を迎え入れ「絶対に見つからないでね、私毎日ご飯とどけるから」と全てを水に流して、兄のことを受け入れる。
本当の家族愛ってこういうことですよ!正しさを差し置いても、守りたいと思えるかどうかが、家族と他人の違い。これぞ究極の愛ですよ。何があっても家族は受け入れてくれる。その家族愛に涙。

⑤裁判で無期懲役を勝ち取り、拘置所に戻ってきた大沢。同室の人間に裁判の結果を伝える事ができない
→他の囚人は死刑になることが間違いない者ばかり。
人間同士の付き合いをしていた大沢は彼らのことを慮って、自身が無期懲役を勝ち取ったことを口にできないんですね。
異常ながらも、人が人を本心から思いやる姿に涙。

その他にも
・逮捕された瞬間の大沢は即座に「これで懲役15年か…」と悟る(逮捕された直後は意外と冷静でいられる事実)
・各人の室内での行動は、花を育てたり、絵を描いたり、延々と筋トレをしたり、本を読みふけったり千差万別。(スマートな人物紹介)
・囚人同士が会話を始める際、自分の犯した罪とともに名前を名乗る(施設内では番号でしか呼ばれないので、名前で呼ばれる機会を欲している人は多い気が。)
・差し入れを受け取るとき、指を朱肉に向かって突き出し、そそくさと指印を押す(早く壁の外の情報を手に入れたい、早く差し入れがみたいからさっさと事務手続きを終えたい気の焦りようを描いている)
・点呼の際の正座、点検の際に室外に出される時のあの感じ。
・護送車から外を眺める大沢は道を歩く女性を目で追ってしまう(壁の中では女性を見る機会が0なので、そのようなチャンスでは自然と目が女性を追うもの)
と、収監された人間の精神状態の描写がとかく丁寧で素晴らしく、それにともなって押し寄せるエモーショナルの波も半端なものではない!


いやはや、主人公の大沢は捕まった瞬間からずっと死刑を免れることのみを考えて行動するわけですよ。
そのはじめが、キチガイのふり。
次に歯ブラシの柄を削ってつくった偽造鍵を用いての脱走。
そして自身で法律に関わるあらゆる事物を勉強(彼は弁護士をつかわず自身で証人尋問まで行なっている)する。
これは、1人の男が生に執着し、自分自身の力で人生を変え、切り拓いている姿に他ならないわけですよ。
いやあいい映画だった!

まあ、犯罪者をヒロイックに描いているという捉え方もできないことは無いし、そういったところに批判の矛先が向かう気がしないでもないですが、そういう映画の本質をすっとばした考えが日本映画をだめにしていってますから!!!と僕は思っています。
この映画は、窮地に立たされた男が生に執着し、生を勝ち取ることが軸ですから!
1人の男が自分自身の力で人生を切り拓いていった記録ですから!
鑑賞者が犯罪者でなくても。あの大沢のエネルギーあふれる姿、生への執着に自分自身を重ね合わせることができるんですよ!ロッキーだってそうじゃん!
いやあ、いい映画でしたよ、ほんと!
早速DVDをポチったので、これから会う人会う人に布教する所存です。


そして、恥ずかしながら、この映画で描かれている事件について、平成生まれの私は何一つ知りませんでした…ということで、最後にブログに各事件のリンクを張って、締めようと思います。
帝銀事件
平沢貞通による、銀行強盗&毒物使用の大量殺人事件

バー・メッカ殺人事件
正田昭による、強盗殺人事件。事件発覚のきっかけは天井からの血のしたたりというヤバさ。

http://yabusaka.moo.jp/kikuchi.htm栃木 雑貨商一家殺人事件
これまた強盗殺人。菊池正によるもの。

カービン銃ギャング事件
磯部勉演じる大沢謙一こと大津健一の起こした今作の軸となる事件。

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