クロニクル

クロニクル
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95点


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超能力を手にした高校生たちが、その力に翻弄されていく姿をファウンドフッテージ形式で描いたSFアクション。平凡で退屈な日常生活を送る3人の高校生アンドリュー、マット、スティーブは、ある日、特殊な能力に目覚める。手を触れずに女子のスカートをめくったり、雲の上まで飛んでアメフトをしたり、3人は手に入れた力を使って刺激的な遊びに夢中になっていく。しかし、そんなある時、あおってきた後続車両にいら立ったアンドリューが力を使って事故にあわせたことから、3人は次第に自らの力に翻弄され、事態は予期せぬ方向へと発展していく。
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良すぎる・・・良すぎる!!!(©しまおまほ)
いやあ、本当に良かった。号泣でしたよ。

2011年だったか2012年だったかのキラキラ町山さんが絶賛、映画秘宝でも大きく取り上げられていた今作。しかも、当初首都圏の映画館(30館)+2週間限定の公開予定だったのが11月中旬まで延長が確定したとのことなので「まあ良くないわけ無いよな、でも期待し過ぎは禁物やぞ・・いやでもこれは期待せざるをえないっしょ!」くらいのテンション(よくわからない形容すみません)でシネマカリテに。
雨の中見てきましたが、案の定満席でした。上映延長の決定は本当に英断だったと思います。(じゃなかったら映画館で観れなかったし)

SNSでも騒がれているそうですし、予告編を見てもらえれば、物語の大筋は概ねわかってしまうと思いますが、備忘録の意味も兼ねてメモしておくと
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父は酒乱で、母は病気、友達はおらず、学校ではいじめられており、カメラを外界に向けることで自分を守ってきた主人公アンドリューは、同級生2人(1人は優しい心を持ったバカ、もう1人はジョックス、2人とも最高の野郎)とともに超能力を手に入れる

超能力を手にした3人は、しょうもないイタズラを繰り返していく中で友情を深めていく

アンドリューは超能力を使って人を傷つけてしまったりするものの、飲み込みが異常に良く、学校で開かれたタレントショーでそれを発揮し、一躍人気者に

参加するのも嫌がっていたパーティに自ら出向く。すると、女の子(後述しますが最低な女)から熱烈アプローチ

しかし飲みすぎていたアンドリューは童貞喪失に失敗してしまう

慰めようとしたジョックス超能力友達スティーブをアンドリューは結果的に殺めてしまう

親父との関係悪化が止まることを知らないアンドリューは母の薬代を稼ぐため、強盗をしてしまう

母親は死亡、そしてそれを父親から責任転嫁され、アンドリューの怒りはピークに、爆発

アンドリューは超能力で街を破壊しまくる

心の優しいバカ友人マットが、その騒ぎを止めるために、しょうがなく本当にしょうがなくアンドリューを殺す

アンドリューと行く約束をしていたチベットにマットが出向き、カメラに向かってアンドリューへの思いを語りかけ、そのカメラを地面に置く
——
といった感じですかね。
思い入れが強いからか、長くなってしまいましたが・・・
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ほんと雑に説明するとこんな感じか・・・?

予告編を一見するだけで、すべての日本人は「童夢っぽくね?」もしくは「キャリーっぽくね?」と気づくわけですが(偏った思い込みとリテラシーの強要)、それよりも何よりも、今年のFREE DOMMUNEに参戦していた故・手塚治虫氏の『ユフラテの樹』にそっくりだなあと思うんですが、どうでしょう?
ちなみに『ユフラテの樹』はこんな話です。
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普通の高校生が、未熟な精神のまま突然おそろしい超能力を身につけたとしたら――『ユフラテの樹』は、そんな学園SFの佳作です。
生物研究会のレポートを作りに”恵法場島”へやってきた、大矢、鎌、シイ子の高校生3人組は、島に生えていた”ユフラテの樹”の果実を食べ、超能力を身につける事になります。大矢は知能が高くなり、鎌は念力、シイ子はピアノの演奏でそれぞれ超能力を発揮。最初は順調に思えた超人生活も、鎌が、時には自分でも制御できないほど強大になった念力を使い、世界独裁を計画し始めた頃から、歯車が狂い始めるのです…。
誰でも1度は考えた事がある「超能力を手に入れたい」という願い。そこには当然、目的があります。大矢はテスト、シイ子はピアノの発表会を乗りきるために超能力を手に入れる事になりますが、それは同時にこの作品が連載された『高1コース』の読者の等身大の悩みでもあり、作家・手塚治虫がそれを意識した事は間違いありません。そして手塚治虫は、独裁によって人を裁く事が招く悲劇も、忘れずにテーマとして盛り込んでいます。もしかすると、それこそがこの作品で読者に一番伝えたかったメッセージかもしれません。
手塚治虫自身はこの作品をあまり評価していないようですが、サスペンス仕立ての前半から、超能力により3人の運命が暴走を始める後半~大団円まで、「全体の構想などまったくないままに連載を始めた」とは思えないほど、読者を飽きさせない見事な構成だと思うのですが…皆さんはどう感じるでしょうか。
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そっくりですよねー。
正直、手塚作品の中では出来がよろしくない部類だと思いますが、気になった方は是非。
ちなみに僕は『メトロポリス』が手塚治虫の最高傑作だと思います。

ちょっと話が逸れてしまいましたが、

よかったところ
○ひとつひとつの描写がクールなだけではなく、しっかりと映画的な意味がこめられている。

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まったく敵わない存在だった親父を超能力を用いて圧倒してしまうことで、すっきりと父親殺しを描く。

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いたずらで車を転落させてしまったあと、友達から叱責されて「うわ、やべえことしちゃったんだな、どうしよどうしよ・・・」と慌てるアンドリューにあわせて天気は急激に変化し、土砂降りの絵に。

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蜘蛛を一瞬にして分解して殺してしまう場面は、
超能力をもってしても圧倒的な敵わなさを女性によって痛感させられていたアンドリューが、でも俺は強いんだと追認させ、破壊することで自我を保つようになるきっかけとして不可欠なシーン。

画像が見つからなかったのですが、なかでも良かったのは、強盗に向かうアンドリューが、消防士だった親父の制服を着るシーン。父親殺しを終えた青年の余裕と愛を欲していた心情、そして親父への想い(今の親父は好きにはなれないけど、あの頃の親父のことは好きだったんだぜあの頃みたいになってくれよ・・・という叶わぬ想い)が凝縮されている。
このシーンがあるからこそ、アンドリューの怒りが爆発するシーンは、母の死の責任を一方的に父からなすりつけられたところとなるんですよね。
なんでお前はいつまでも何かから逃げてるんだよ!と。
その姿は、以前のアンドリュー自身ともかぶるところがあるはずで、間接的に自分自身への怒りでもあるんですよ!

まじでここはこの映画の白眉!
これだけのことを、親父の制服を着るということだけで雄弁に物語ってしまう。これが映画だ!
もうこれ見るだけでも1000円の価値はありますよ。

○皆さんおっしゃってますが、形骸化してしまったPOV方式に一石を投じるアイデア
これについても書き出すとキリがない&全くもって同意となってしまうので、映画秘宝11月号のてらさわホークさんのテキストや、ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル10/5放送回をニコ動とかで検索していただいければ。

○男3人の馬鹿馬鹿しさ満載の仲良し感
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もう、リアリティのある馬鹿馬鹿しいホモソーシャルな描写は大好物です。
みんな本当に仲が良さそうなだけに、中盤以降の展開は涙なしでは見れない・・・

だめだったところ
×物語の設定を守るために発生してしまう明らかにおかしな描写。
例えば、雲の中を通り抜けるカメラのレンズに水滴がほとんどつかない。
とか
主人公のアンドリューやアンドリューに関わる人がカメラをまわしているファウンドフッテージという設定があるにも関わらず、意図的に置かれたカメラがある(具体的には病院のシーンや下に画像を貼ったシーン)とか。

そりゃ、こんな革新的な撮影アイデアを利用してるんだから、少しくらいおかしな描写が発生してしまうってことはわかってます!こんな些細な点を指摘するのは野暮だってこともわかってます!
でも、どんな映画にも良いところと悪いところがあって、そのどちらもに触れるってのをこのブログの基本的な雛形にしたいと思っているのでご容赦ください!
そりゃ俺だってこんな些末なことを指摘したくないさ!だって、本当に良すぎる(©しまおまほ)んですから!!!

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この穴の中で3人は超能力を手に入れる。しかしこの映像は誰がとっているんだ!?ってことです。

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超能力で自動車ひねり潰す“頂点捕食者”アンドリュー

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バスを宙に浮かべ、投げとばす“頂点捕食者”アンドリュー

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この彼女赤髪ビッチと、アンドリューは童貞卒業寸前までいくのだが・・・
緊張もあったんでしょう、慣れない酒の飲み過ぎもあったんでしょう、ズボンをおろしておきながら、アンドリューは彼女赤髪ビッチに向かって嘔吐してしまうわけですよ・・・
それだけならまだしも、童貞卒業寸前の事件を経験していない男の方が世の中には多いということを知っていながら(勝手な思い込み)、この彼女赤髪ビッチは、そんなアンドリューのナーバスな気持ちを一切推し量ることなく、友達に言いふらすわけです。
そんな悪魔の所業もあって、アンドリューが学校に行くと、周りからそのことを揶揄されるんですが、そのアンドリューがかわいそうでかわいそうで・・・彼女赤髪ビッチは地獄に堕ちろ!!!!!!!!と未だに怒りがおさまりません・・・
僕がアンドリューと同じ学校に居たら、あの彼女赤髪ビッチになんとか痛い目あわせようと画策してしまうでしょうね。(最低!)

いや考えれば考えるほどいい映画だったなあ。
こんなに誰かと喋りたくなったのは桐島以来だ。本当に良すぎる(©しまおまほ)・・

ジュブナイルものとしても、SFとしても、学園ものとしても、スリラーとしても、家族ものとしても、評価されるべき作品ですよ、本当に。
いい映画って、“青春学園もの”とか“サイコスリラー”とか、そういった一言で語れないもんですよね。
世紀の大傑作『悪魔の毒々モンスター』はコメディであり、スプラッタフィルムであり、恋愛映画でありながらも、それだけではない人間の醜さと正しさ、そして本当に大切にしなければならないものは何かという人生のすべてを教えてくれる映画なわけですし。
『クロニクル』は、まさにそんな映画でした。表面に写っているものをなぞって盛り上がることだけが映画の楽しさじゃないという当たり前の事実を改めて痛感させられましたよ。
上映延長してくれてありがとうシネマカリテ

シネマカリテは、上映作品のセレクトはもちろんのこと、
いろんな諸事情で、劇場未公開・DVDスルーになってしまった隠れた名作を1本500円で観られるという素敵としか言いようのない“Haute qualité オト カリテ”という企画を実行したり、本当素晴らしいアティチュードの映画館だと思います。
ちなみに1回目(11/2~11/8)はジョセフゴードンレヴィッド主演のアクションサスペンス『プレミアムラッシュ』、2回目(12/21~12/27)は15歳の英国妄想男子の日常を綴った青春コメディ『サブマリン』を上映とのこと。
どちらも未見なので、必ず見に行きます。
(受付の女の子がみんな可愛いっていうのも素晴らしいですね!)

ところで、予告編で見た『ブリングリング』という作品。

一時どハマりしていたアゼリアバンクスの曲が使われていたので、確実に観に行くのですが、『トレインスポッテイング』の原作者の小説をソフィアコッポラが監督するということでとても驚きました。明らかに相性が悪そうですが、どうなんでしょうか・・・


アゼリアバンクスの最高にYAVAY 1曲!
クール!そしてキュート!

明日はカワハロでロッキーホラーショーに参加してきます!!!!楽しみー。その模様もブログにアップできればと思いますー。

2012年 アメリカ 84分 
監督+原案:ジョシュ・トランク
製作:ジョン・デイビス、アダム・シュローダー
製作総指揮:ジェームズ・ドッドソン
脚本+原案:マックス・ランディス
撮影:マシュー・ジェンセン
美術:スティーブン・アルトマン
編集:エリオット・グリーンバーグ
音楽監修:アンドレア・フォン・フォースター