ウォームボディーズ

ウォームボディーズ(原題:Warm Bodies)

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10点

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食べるつもりで襲った人間の女子に一目ぼれしてしまったゾンビ男子の恋を描く異色のゾンビラブコメディ。謎のウィルスにより人類の半分がゾンビ化した世界で、生き残った人々は高い壁を築いて武装し、ゾンビから身を守りながら生活していた。廃墟となった空港に暮らすゾンビのRは、ある日、壁の外に食糧を調達しにきた人間たちを襲撃するが、ショットガンを構えた少女ジュリーに一目ぼれしてしまう。Rはジュリーを自分の住まいに連れ帰り、当初は戸惑っていたジュリーも、Rの優しさに次第に心を開いていくが……。監督は「50/50 フィフティ・フィフティ」のジョナサン・レビン。
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設定上ゾンビとされる者は出てくるものの、全くもってこれはゾンビ映画ではないっっっっ!!!!!!ゾンビブームに乗っかったご都合主義恋愛映画だっっっっ!!!!!!
と暑苦しい書き出しですが、内容もこんな感じです。不快に思う方もいるかもしれませんが、、すみません。

さて、仕事終わりと思しきアベックが半数、むさっ苦しい男(褒めてます!)+お洒落な女の子が半数といった、ゾンビ映画らしくない客層に驚きつつ、新宿武蔵野館で鑑賞してきました。
鑑賞後には、アベックの「観に来てよかったっしょ!」「うんっ♡」といったやりとりが耳に飛び込んできたように、世間的な評判は上々なようだけど(Yahoo映画でも映画.comでも星3.5以上)、僕は全く受けつけられず『ダイナソープロジェクト』と並んで今年ワーストを争う一作・・・
ゾンビ映画としてはその外郭をなしてなく、恋愛映画としてはあまりにも稚拙なつくり・・・
個人的な都合で、3週間ぶりに映画館に映画を観に行っただけに、この落胆はキツかった。
レイトショーで観たから、お口直しもできないし・・・いやほんとにキツかった。

監督は『50/50』で、お互いを陰で思いやる男同士ならではのアツい友情関係と、その関係に適度に交わる男女の恋愛を繊細に描いて、評価を勝ち取ったジョナサンレヴィン。(ちなみに『50/50』は2011年のベスト10に入る程度に好きな映画です。アナケンドリックも可愛かった。)
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それによって、人間関係を丁寧に扱うことのできる監督と認知されたのでしょう、その彼が与えられた題材は“ゾンビと人間の恋愛”というもの。
その結果はリアリティの破滅と、映画界(とゾンビファン)がつくりあげてきたゾンビ概念の壊滅でした・・・

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このシーンは違いますが好きな女の子とオープンカーでドライブもします

○よかったところ
・軽快な編集
いわゆる“ミニシアター系映画”独特の小気味良い編集でテンポは良かった。

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このシーンなんかも“ミニシアター系映画”らしい絵作りですよね。
(こういう独特の軽快さも、題材のひとつであるゾンビとの食い合わせが悪く、ミスマッチだなーと感じてしまったところもあるっちゃあるんですが・・・)

× だめだったところ(箇条書きじゃない&長いです)

設定を振り返ってみると
この映画に登場する人種は

・人間
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居住区の外周にゾンビを阻むための高い壁を作り、暮らしている。
食料や医薬品が不足すると、武装した市民団体が壁の外に出て調達。

・ゾンビ
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謎のウイルスで感染してしまったゾンビ。
かすかに喋ることができ、単語のみを発した会話“らしきもの”が可能。
空腹になると視覚、嗅覚、聴覚で人間を探し、食べる。
人間の脳みそを食べることで、その人の記憶を共有できる。
ゾンビが進行すると下で紹介する“ガイコツ”になっていく。

・ガイコツ
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安っぽいガイコツ。(このCGかなりのやっつけ仕事だと思うんですがどうなんでしょう)
全力疾走して、心臓が動いている者をただただ食べる。
知性は全くない。

の3種。
そもそも、謎のウイルスでゾンビになっているという設定にも関わらず、壁でゾンビを阻むのはなぜなのだ!?意味なくね!?
はたまたこの映画は、主人公のゾンビが自分自身の状況や世界設定を流暢に語る場面から始まるとんでもっぷり!なぜ脳ははっきりしているにも関わらず、ちゃんとした会話はできないんだ!?
といった謎設定。

とりわけ、ホラーやゾンビ映画の場合、設定だけはしっかりと詰めないと物語が破綻すると思ってます。設定さえしっかりしてれば、物語はぶっ飛んでても良い!
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マーズアタック』のように!


この映画、ざっくりとラストまでのあらすじを書くと、
食料を求めて歩いていたゾンビ(R)が、そこで出会った女性(ジュリー)に一目惚れして、自分の居住地にかくまい、ともに生活しているうちに、心を通わせていく。
そうしているうちにRの胸の奥で温かいものが脈打ちはじめる。ジュリーを守るRの姿にゾンビ仲間たちも愛を取り戻して行くのだが、そうすると彼らはガイコツに狙われる。
ゾンビに敵対意識を抱いていた人間たちも、ガイコツの脅威を感じ、結果的に人間とゾンビの共同戦線でガイコツを見事に殲滅。結果的にRは人間に戻り、ジュリーと結ばれる。(余談ですが、主人公ゾンビの名前をRとしたのは、後で記すとおりRomioの意と、Rebornの意が込められてるんでしょうね)といった、いやいやいくらなんでもできすぎでしょ!という筋書き。
映画には許されるご都合主義(マーズアタックのラストシーンとか、宇宙戦争のラストシーンとかー。ま、あれも許せないって人もいるわけで、それは好みだと思いますが)もあると考えてるけど、今作のそれは、数的にも質的にも許されざるご都合主義に感じられ、まったくノれず。


人間の女とゾンビの男(しかもその女は、目の前で彼氏をゾンビ男に喰われている)という“結ばれない運命”にある2人、さらにはその2人の恋仲に立ちはだかる女の父親。
重ねて、自分の名前を頭文字しか思い出すことができず、自身を“R”と呼ぶ男ゾンビに対するヒロインの名前はジュリー。考えるまでもなく『ロミオとジュリエット』に目配せをした設定・ストーリーなわけですが・・・
ロミオとジュリエット』は困難、結ばれないことを運命づけられているにも関わらず、惹かれ合う2人の悲哀が向かって行くラストに美しさ、カタルシスを感じるわけで!
『ウォームボディーズ』は、たいした困難もなく、あれよあれよと接近し、結ばれるという極めて稚拙な物語。
たとえゾンビだからとは言え、目の前で彼氏のことを喰った野郎に対して、数週間で恋愛感情をいだくわけないだろ!どんなビッチだ!
そんな尻軽女と結ばれても、男としてなんの感動もねーわ!
ってのが一番の思いですかね。

ゾンビもので愛を描いた傑作といえば『バタリアンリターンズ』が真っ先に思い浮かぶんですが、どうでしょう?
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バタリアンリターンズ』は、ゴアシーンもよし、ラストの心中シーンも切なく、号泣もんですよね、ほんと。

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未見だけど、ゾンビオリンピックで公開されていた『BEFORE DAWN ビフォア・ドーン』も同じような題材で興味の惹かれる1本。

ここ最近は『ショーンオブザデッド』『ゾンビランド』『ロンドンゾンビ紀行』『ゾンビーノ』など、ゾンビ映画に異質な要素を組み合わせた“ゾンビ+○○(コメディ)”でゾンビ映画の新たな可能性が切り開かれてきたわけですが、『ウォーム・ボディーズ』を観たことで、この流れがどんどんと勢いを増して、ゴア描写のゆるいゾンビ映画や、ゾンビの歴史を完全無視した作品が作られ続ける不安を感じてきました・・・
上に挙げた作品はどれも肯定的に捉えてたけど、“ゾンビ+○○もの”は、飽和点まできてしまってるなーというかなんというか。
そういえば、『ワールドウォーZ』も“ゾンビ+家族愛”ものでしたが、ゾンビはないがしろにされてたよなーと思ったり。

少なくとも、ゾンビが登場するのであれば、
・しっかりとしたゴア描写
・ゾンビのいる世界観をはっきりさせる
これくらいのお約束は守って欲しいなあと思うわけです。
でなければ「ゾンビ映画」ではないっ!
百歩譲っても、『ウォームボディーズ』に登場するRはゾンビではないし、ゾンビブームに乗っかっただけってことが、あけすけに感じられる作品を「ゾンビ映画」と呼んで、ゾンビを利用することはやめてくれー。

愛で変わっていくことはとても大切なことだとは思いますが、愛を盲信して振りかざすことは卑しい。うん。

2013年 アメリカ 98分 
監督+脚本:ジョナサン・レビン
製作:ブルーナ・パパンドレア、デビッド・ホバーマン、トッド・リーバーマン
製作総指揮:ローリー・ウェブ
原作:アイザック・マリオン
撮影:ハビエル・アギーレサロベ
美術:マーティン・ホイスト
衣装:ジョージ・L・リトル
編集:ナンシー・リチャードソン
音楽:マルコ・ベルトラミ、バック・サンダース

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